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有罪 20

「いつもいつも俺や店長の助言を無視して、声かけられたからってだけで変なのに引っかかって奉仕するだけして捨てられるを繰り返していたケイゴが! とうとう学んで、ちゃんとお互い良く知り合ってから! 付き合うようになったと!」  いつも少し世間を斜に見るような態度だと言うのに、壱はよほどだったのか顔をキラキラさせて饒舌だ。 「ちょ……止めてよ、ダメダメって言われてる気がしてくる」 「気がしてるんじゃなくてそうだろ」  途端、スン と真顔になって告げてくるから、何も言い返せないまま唇をひん曲げた。  壱はそんなオレを見て嬉しそうに目を細めて、「次はいい人だといいな」と言って笑ってくれる。 「え⁉ じゃあいつもの『ケイゴくん残念でしたね次があるよ会』は今回したの? しなかったの?」  オレが振られるたびに、終業後に壱とバイト先の店長と三人のちょっとした飲み会をして慰めていてくれたんだけれど、そんな名前だったなんて知らなかった…… 「壱の学科はうちよりも試験期間が長くてまだバイトに来られないもんな」 「シフト確認で昨日ちょっとだけ顔出したけどね、店長は何も言ってなかったよなぁ……」  毎回店長が張り切って食事を用意して、食べきれなかった分は包んでくれたりするから、本当に助かるんだ。それはオレと同じように苦学生の壱も一緒だから、自分抜きでそれが行われたのかどうかのチェックは大事らしい。 「それなんだけど、話が戻って悪いんだけど、その日のうちに恋人(仮)ができたから さ」 「まだしてないんだ?」 「うん。でも……今回は慰めてもらう必要ないかなとも思ってて」  ショックを受けた顔で壱はよろめくと、オレの服の裾をぐいぐいと引っ張って首を振る。 「も、もらえるものは貰っとこうよ! 臨時の食料助かるんだから!」 「あー……でも、もう恋人(仮)がいるんだから……」 「でも連絡きてないんだろ⁉」  どすん! と胸に衝撃を受けた。  自分で悩んでいる間はそう思わなかったけれど、第三者に言葉として出されるとそのことを自分がどれだけ気にしていたのかを突きつけてくるようだった。 「き……てないっ! のはっ! お仕事が忙しいからっ!」  そうどん!と言い返して……自分は佐藤の仕事が何か聞かなかったことに気づく。  今までの相手に就業している人間が少なかったから、聞くことではないとなんとなく避けてしまったのかもしれない。   「……たぶん」  付け加えた言葉に、壱は憐れむような光を目に宿す。  今ここで壱に助言を求めたら、「騙されたな」「遊びだったんだ」「からかわれただけかな」のどれかが返ってくるって確信が持てる。

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