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有罪 21

 携帯電話に登録している佐藤の番号も……かけ直していないから本物かどうかわからない。  ましてや恋人になろうと言う人間に、出会い系で使う名前を教えるのだから……  本気なんかじゃ、なかったのかな?  そんな考えが思考の隙間風に入り込んでくる。 「…………」 「ケイゴ?」  黙り込んでうつむいてしまったオレに、壱は慌てて慰めの言葉をかけようとしてくるけれど……  なんだか、ラブホテルでやり取りした佐藤が幻だったんだと言われても納得できてしまうほど、オレは「付き合う」と言ってくれた言葉を疑い始めていた。  自分で距離を取っておいて、でも実は嘘だったのかも? と疑うなんて、なんて不誠実だとわかってはいるのに、むくりと首をもたげた疑惑はどうにもいなせなくて。  さっと携帯電話を取り出し、ロックを外すのももどかしい動きで佐藤(仮)の電話を探し出す。  味気ない電話番号だけしか並ばないプロフィール欄は、オレが佐藤のことをどれだけ知らないかはっきりと物語っている。 「  ────っ!」  べち なんて汚い音がしたけれど、携帯電話はオレの操作を理解してくれて佐藤の携帯電話に繋げてくれたようだった。 「えっ⁉ ええ⁉ かけちゃったの⁉」 「んっ! こ、これで出なかったら、……なんだっけ? 『ケイゴくんカッコいいから次があるよ会』を今日しよう!」  拳にしていた方は大丈夫だったけれど、携帯電話を持っている方の手は緊張のせいでカタカタと小さく震えてて、それを見て壱は「『ケイゴくん残念でしたね次があるよ会』」だよって言って和まそうとしてくれた。    呼び出し音はか細い。  それこそ今にも切れそうな蜘蛛の糸だ。  自分を天国に引き上げるのも、地獄の底でがんじがらめにするのもこのコール音次第なんだと思うと、呼吸もままならない。   「  ────ケイ君⁉」    どれだけ呼び出しが続くんだろうって落ち込みかけた時、音が変わって声が聞こえた。  ものすごく驚いているような声だったから、オレは自分が電話をかけたのが悪かったんだと思って飛び上がる。 「ごめ! ごめんっ! 時間も考えなくかけちゃって!」 「  ────いい! いいから! 待って!」  声は体を掴めるわけでもないのに、佐藤の言葉に通話終了を押しそうになった手を止めた。 「  ────お電話いただけて嬉しいです」  胸がくすぐったくなるような言葉を返してくれるけれど、言葉の違いに気が付いた。 「今、仕事中なんだろ?」 「────ええ、でもちょうど休憩をとろうとしていたところですから」 「そ そか   」  ほ と胸の奥から安堵の息を吐き出すと、壱はオレの背中を軽く叩いてから手を振って自分の学部棟の方へと言ってしまう。

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