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有罪 26
姉はそう言うけれど、予想としては姉の務めた先は父の経営する会社の秘書室で、社長室に茶を運ぶような仕事だったはずだ。
でなければ父が姉を働きに出すだなんて、監視の外れる時間を作るわけがない。
もしそれ以外で働いて稼いだのだとするならば、父の目を搔い潜ると言う随分な苦労をしていると言うことで、それを安易に受け取ることはできなかった。
「いいんだよ、オレは全部を納得して家を出たんだから」
姉の封筒を握り締めた手を押し返すと、オレとよく似た顔がくしゃりと歪んで悲しそうだ。
オレの家族は四人家族だった。
父と母、そして姉とオレの構成だったが、今はその家族にオレは入っていない。
なぜならばオレがゲイだと言うことをカミングアウト……じゃなくて、アウティングされたためだ。
男が好きで性対象なのだと言う事実を、オレは親……特に父には一生話すつもりはなかった、けれど同類の先輩がオレを口説こうとしてきたのをスルーしたら逆上されて……
昔ながらの頭の固い父はオレのセクシャリティについて一切理解できず、病気だと決めつけて汚らわしいと殴りつけた。
矯正させるためだと言って行われた折檻は意味なんかなくて、意思を曲げることも性趣向を変えることもしないオレを父は勘当だと言って外へ蹴り出して……今に至る。
もちろん、家からの支援なんてものはまったくなくて……それでもなんとかなったのは、姉がこっそりオレの荷物を渡してくれたからだ。
以降、何くれとオレの様子を見ては心配してくれていて、本当に感謝している。
小さい頃から不在がち……いや、不在ばかりの両親のせいでオレの面倒は姉がほとんど見たと言ってもいいくらいで、何か困ったことがあっても姉と相談して乗り越えてきた。
そんな姉だからこそ、オレのために苦労をして欲しくないと思う。
「ありがとうね」
「ケイちゃん……」
握りしめられてはいたが、姉の腕力なんてしれているんだろう、白い封筒は皺ひとつない。
姉に悲しい顔をさせたいわけじゃないから、話を反らすためにぱっとローテーブルを指さした。
「お茶くらいは出すから座って! ちゃんと作って冷やしてあるんだ」
余分な器はないから、オレがいつも使っている大きなマグカップに冷たい麦茶を注いで差し出す。
気の利いたお茶請けひとつなくて申し訳なかったけど、キャベツと調味料しかないのだからどうしようもなくてもそもそと姉の対面へと座った。
「きちんと生活しているのね」
「うん? お茶?」
家の経済状況を考えるならば水道水でも飲んでおくべきなのかもしれなかったが、水でゆっくりと淹れた茶は譲れない。
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