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有罪 33

 姉はそう言う人だ。 「……」  けれどオレは、そんな優しさに報いるような生き方はできなくて……  父が異性を性的な対象として見るのが当然のように、オレの対象は同性から揺らぎようがなくて、自分自身を幾ら非難しても変えたいと思ってもどうにもならないことだった。 「どうにかなるなら、もっと小さい頃からどうにかしてるよ」  苦い言葉を呟いて乱暴に涙を拭う。  そんな融通の利くものならオレも、それに佐藤もこんな生き方はしてないだろうから。  手の中の黒い画面を見下ろして、うっすらと映る自分の顔を見て気分が落ち込む。  鏡と言うわけでもないのに目元の色がはっきりとわかってしまうほど、オレの目元は赤くなってしまっている。  ゴシゴシと乱暴に拭きすぎた自覚はあったから、誰に文句を言えるものでもない。 「佐藤 は、なんて思うかな」  うずくまって動けないでいると手の中の携帯電話が震えて着信を教えてくる。  泣いているせいで鼻声だったしそんな気分でもないから無視しようと思っていたのだけれど、その着信は繰り返し鳴らされて……しつこく電話してくる相手なんてバイト先くらいしか心当たりがないオレは、しぶしぶ電話を取り出して目を擦りながら「はい」と答えた。  急遽バイトに出てくれとでも言われるのかと思っていたら、相手は一瞬言葉を詰まらした後に「何があった?」と問いかけてくる。  慌てて見た発信者の名前は、佐藤(仮)と浮かんでいて……  ぐずぐずとした鼻声でしどろもどろに言い訳してみても、佐藤の融通が利かないのはわかっている。  とは言えその融通の利かなさがあったからこそ、今オレはここで佐藤を待っていると言うわけだ。  オレのいる場所を告げるとすぐに行くから と言う言葉と共にバタバタと騒がしい音が聞こえて通話は切れてしまった。 「……このやり取りした後でこない とか、ないよな?」  まだ鼻の奥に違和感はあるけれど、泣き出すなんて大きな感情の波を乗り越えてしまった今、なんとなく気恥ずかしくなってしまっていて可能ならすぐにでもここを立ち去りたいと思う。  佐藤はすぐに来ると言っていたし、だからと言ってここで泣き顔を晒し続けるのも恥ずかしくてもじもじと顔を擦った。  ────パァン!  思わず飛び上がりたくなるような破裂音に反射的に体が跳ねてしまう。  甲高く響いた音に何事かと顔を上げて……  見慣れたドレッドヘアを見つけてしまってさっと胸が冷たくなる。  左右に軽薄そうに揺れる体の向こうにもう一人いて、何事か怒鳴っているのが聞こえた。  

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