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有罪 34
感情のままに出る言葉は感情に任せたせいかところどころ支離滅裂だったけれど、だからと言って内容がわからないわけじゃなかった。
客観的に見られるようになってもやっぱりちょっとないな って思わせるドレッドヘアを眺めて、相変わらず自分の都合で人を振り回そうとしているのかと溜息を吐く。
あんな一方的に切られるように別れたにしては、なんとも思わない自分に気づいて小さく笑った。
指にはめていたサイズの合わない指輪がないせいなのか、それともすぐに佐藤が来てくれると信じることができているからか……一緒にいた時間で言うならば、そこのドレッドヘアの方が断然長いはずだったのに冷めた思いで見れるのは、佐藤のおかげだと思う。
「なんでパチンコに行ってるワケ⁉ 散々待たせといてなんだよ⁉」
「や……だって新台……」
しどろもどろの言葉を振り切るようにまた小気味よい音が響いて大げさに髪が揺れる。
パチンコに夢中になっててデートの約束をすっぽかされたことも、デート先だと言ってパチンコ屋に連れていかれたことも、貸す金がなくて結局は貸せなかったけれどなんとかしてオレから金を引っ張ろうとしていたり……
さっと蘇った記憶だったけれどそんなことがあったな 程度の感想しか湧いてこず、オレは改めて言い争っている姿を眺めてどうして壱があいつに対して辛口だったのかを理解した。
はっきりと言うことはなかったけれど、やんわりと「どうしてあんな男に引っかかっているのか」と聞かれて、オレを受け入れてくれるからと答えた記憶がある。
好きだから じゃなくてオレが男を好きでも許してくれる相手だったから……
別れてすぐに違う相手との修羅場を見たと言うのに何も思わないのは、そう言うことなのかもしれない。
「ふっざけんなクソカスチ〇ポ!」
そう叫ぶと相手はさっさと踵を返して向こうへと行ってしまった。
一人残されたからか元彼は気まずそうにその場でもじもじと身なりを整えるようなしぐさをして、くすくすと笑っている通行人に威嚇するような表情を見せている。
くるりと振り返ればオレがここにいるとわかってしまうほど見通しのいい場所と距離だったから、さっさと離れてしまいたかったが佐藤がここにくると言っていたから移動もできず……
気づいてくれるなと祈りながら、せめてもの抵抗として背中を向けてできるだけ肩をすぼめて体を小さくした。
大きな独り言で悪態を吐いて……いる声が近づいてきて「げっ」と思わず声が漏れてしまった。
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