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有罪 38
走ってきたからかうっすら汗をかいた横顔を盗み見て、熱を逃がそうとネクタイを緩める姿にどっと脈が跳ねる。
「どうかした?」
「う、ううん! なんにもっなんにもないっ!」
「何もないはずないだろう? こんなに目を赤くして、それにあんなのにも絡まれて……遅くなって本当に悪かった」
オレが泣いていたのも、絡まれたのも自分の責任であって佐藤は何も悪くないのに、どうして頭を下げてくるんだろう?
オレが悪いのでいいし、オレのせいでいいはずだ。
「じぶ 自分で蒔いた種だし……」
「それでも泣いていい理由にはならないし、侮辱されていいわけじゃない」
労わるように熱い指先が頬の上を滑り、赤くなった目の周りにそっと近づく。
触れてしまうと痛むと思ったのか、指先はオレに触れそうで触れず……熱だけがじりじりと存在を主張する。
「顔、真っ赤だな。ずいぶんと暑いからだな」
「んっ……これは、暑いってわけじゃ……」
肌の上を滑る熱がぞくぞくとした感覚を呼び起こす。
「じゃあ、涼しいところに行こうか」
オレの心を見透かしたかのように真っ直ぐな目で見下ろしながらそう言うから、オレは二つ返事でOKを出した。
「……」
辛うじて飲み込んだ「で?」と言う言葉だったが、雰囲気で察知したのか佐藤はきょとんとした表情で「チーズケーキが絶品なんだそうだ」と返してくる。
汗ばむ気温になり始めていた外と違って、薄い緑のオーニングテントでできた日陰は店内に影を落として更に涼やかなものへと雰囲気を変えていた。観葉植物が多く置かれた店内は男が立ち入りにくいと言うほど可愛らしくなくて、男二人で奥のイートインスペースに座っていても人目を気にする必要はなかった。
微かにレモンの風味の漂う水を飲み干して、確かに涼しい場所であるケーキ屋でどっと肩を落として落ち込んだ。
「甘いものは苦手だったかな?」
オレの様子のおかしさに慌てて尋ねてくる佐藤の純粋さと比べ、オレはどれだけ汚れているんだろうか?
少し乱れた首元を名残惜し気に見遣って、あの流れでここに来るのが佐藤らしいと思ってわずかに笑みが浮かぶ。
「甘いのは、……好きだよ」
ぶぅっと膨れたい気分で呟いたと言うのに、佐藤は嬉しそうに笑って返してくれる。
「ちょっとデートみたいだろう?」
「へっ⁉」
思わずカチン と水の入ったグラスを鳴らしてしまう。
デートって……パチ屋じゃないのか? なんて、馬鹿な考えはしないけれど、だからと言って事前に調べた場所に連れてこられたことなんて……あったかな?
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