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有罪 40

 手は全然でないけど、オレでも知っているようなブランドの名前だ。  オレに向けてさっと箱を開くと、二個並んだうちの小さなリングを摘まみ上げた。  取り出された銀色の光る輪はセール品で誰がどう見ても明らかに安っぽかった前の指輪とは明らかに違う光り方をしている。 「ケイ君と同じ名前のブランドがあるって知人から教えられて……気に入らないかな?」 「ぁ ぇ、えっと……」 「もしよければ、以前に話した仮とついている部分を取り払って正式な恋人になってもらえないだろうか?」  そんな……重い と思うのに、同時に胸が苦しい。  オレが今まで付き合ってきた男達はろくでもない奴ばかりで、恋人でいるためなら……と様々な要求を呑んできた。その中にはさっき元彼が言おうとした、常識的に考えるとちょっとアレなものもたくさんあって……  恋人が言ったから。  なんて免罪符を使う気はない。  オレのやったことはオレが責任を取るべきだ。  オレは、こんな真摯に向き合ってもらえるような人間じゃない。 「…………」 「迷いもすると思う」  そう言って佐藤はオレの左手の指に指輪をはめてくる。  サイズがぴったりなせいか、それとも今までの指輪が合わなかったからか、馴染むように指に収まるそれはオレ好みど真ん中のデザインだ。  美しい、洗練されたシンプルな曲線が流れる指輪は綺麗で、……でもどうしてもオレには不釣り合いに思えた。  姉を犠牲にして、その責任も取れないのにこんなにあっさりと幸せを手に入れていいとは思えない。 「……」  せっかく指にはまったそれを外してテーブルの上に置くと、佐藤の不安そうな瞳が揺れて……でも怒り出すでも、責めるでもなくオレが言葉を見つけるまでじっと待っててくれている。 「オレ は、その……け、経験人数も多くて、相手もあんなクズみたいなのばかりで。好きかどうかじゃなくて、傍に居てくれるかどうかで選ぶような人間だし」  家も追い出されていて、姉を犠牲にして生きているような人間には、この指輪は重すぎる。  真っ直ぐにこっちを見てくれる誠実な佐藤には、オレみたいなのじゃなくてもっと拗れていない素直な人が似合うんだと思う。 「だから、あんたには不釣り合いな人間なんだ」  一瞬だけしかつけていないのにうら寂しく思える薬指を擦りながら肩を竦めて項垂れる。  何も言わない引き結ばれた肉厚な唇を目で追うと、それがどれだけ熱くて柔らかだったかを思い出す。  オレ好みの、唇だ。 「俺にだって過去はある」  指先がテーブルに置いた指輪を引き寄せる。  

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