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有罪 41
「だから、ケイ君の過去のことは気にしない」
そう言うと佐藤は指輪を摘まんで、はっとしたような表情をしてから「昔の相手に妬けるけどね」とちょっと照れくさそうに言葉を続ける。
「君がそう言った付き合いしかできなかったことに理由があるのなら、それごと受け入れたいと思うし、ケイ君とならそう言ったことをすり合わせて、話し合って、小さな喧嘩をするかもしれないけれど、お互い納得しながら生きていきたいんだ」
二度目に手を取られて、振り払えばいいのにそれができないままにまた再び銀色の輪を通されて……
佐藤に触れられた手がさっと熱を帯びて、それがゆっくりと燃え広がるように体に広がっていく。
「オレと……生きていきたい?」
会うのはこれが二度目だ。
お互い本名を知っているわけじゃない。
なのに突然、まるでプロポーズのようなことを言われて真に受けるなんて、さすがにちょろいオレでもおいおいおいって突っ込みをしてしまうレベルだけど。
……なのに、そうやって茶化せないのはオレの心が首を振っているからだ。
佐藤は、今までの男達と違うって。
「……」
オレのことを金づるでも、性欲処理の相手でも、娯楽に使うわけでも、自尊心を満たすためにこき下ろすわけでもないんだって……
「なんか、わかるんだよね」
突然変なコトを言ったオレをからかいもせず、さっき呟いた言葉を理解しようと考えてくれているのがその様子でわかる。
佐藤はオレのことを考えて、何か助けが必要でないか、不快な気持ちになっていないかをきちんと観察してくれているんだって。
存在をなかったことにもしないし。
あざ笑うこともしないだろう。
「オレ……ずるい人間なんだよ。責任があるのに何もせずに逃げ出して、その尻拭いを姉にさせてしまって…………なのに、そんな姉に対して何もできることがなくて……結局、姉が犠牲になって……」
自分の力のなさを思うとぼろりと堪えようとしていた涙が零れてしまう。
銀色の指輪の上に落ちたそれは表面に弾かれて、きらきらと光る粒になって流れ落ちていく。
指の間に吸い込まれるしかなかった涙と同じように、オレは無力で……
「それは、俺が手助けできることかな?」
オレの細い指とは違って、男らしい節の目立つ……でも丁寧に手入れのされた佐藤の手に包まれて、オレの手は小さな子供のように見える。
まるでおくるみにくるまれた様子に思えて、ざわめき始めていた胸の内がさっと凪いだ。
オレの話を聞いて、一緒に悩もうとしてくれている姿勢を見せてくれた奴が、今までいただろうか?
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