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有罪 47

「お間違えですよ」  できるだけ冷たくそっけない声で言い返す。 「あっ……そうでしたか、申し訳ないです。……どこに行ったんだ…………」  苦い気分を隠しもせず、声の持ち主はぶつぶつと文句を言いながらトイレから出て行ったようだった。  それを、個室の中でアキヨシと二人、息を詰めて見送る。 「……あ、あれで、よかったのか? もし拗れてるだけだったら、追いかけた方が……」 「いや、かまわない」  アキヨシには珍しくきつい口調で言うと、そろりと便座から足を下ろしてもう一度オレを抱きしめて来た。 「まさかこのタイミングで出会えるなんて……」 「オ、オレもびっくりした! アキヨシもびっくりだろ? オレみたいな貧乏学生が 似つかわしくない高級ホテルなんて」  このホテルは昔から営業していて、少し格式の高いホテルとして有名だった。  今回のように結婚に際しての家族の顔合わせや、お見合い自体の場所としても雰囲気がいいのでよく使われるから、父と母が見合いをしたのもここだったのだ……と、小さい頃に聞いた。 「あ……ああ、そうだな」 「貧乏過ぎてホテルでパパ活ってわけじゃないからな」  会えるとは思ってなかったアキヨシに、思わぬところで会えたからか妙なテンションでそうからかう。 「そう言えば、アキヨシはなんで   ────っ!」  じゅ と唾液を吸われる音が咥内に響いた。  あまりの突然のことに何も身構えていなかったオレの舌は、アキヨシが欲するままに引きずり出されて肉厚の唇に挟まれる。 「ひゃ っ」  そこに軽く歯を立てられるとぞくぞくとするような感覚が腰から胸の先へと駆け抜けて、硬くなった乳首が痛みを訴えるほど鋭敏になって……  深く、けれど舌は吸ったままで、べったりとわずかでも密着したいとでも言うように絡められた舌は、遠慮なくオレの咥内を弄る。  柔らかい内頬の肉、少しざらりとした舌の表面、真珠のように羅列する歯をなぞっていき……もうどこもかしこもアキヨシに触れられて、オレの口の中でアキヨシが触れていない場所はないんじゃないかってくらい犯され尽くされた。 「ぁ っんっぁ……アキ、だめ、オレ。行かなきゃ   」 「イク? 誰ので?」 「だ、だれ……ぁ、んっ」  いつの間にか体を弄り始めた手に胸の突起を探り当てられて、はっと正気に戻って慌てて首を振る。 「だ、だめっ! オレ、これから姉さんの結婚相手と家族の顔合わせなんだ!」  そう怒鳴るとアキヨシははっとして、ばつが悪そうにオレの唇の端の涎を拭きとる。 「そんな大事な日だったのか……」

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