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有罪 49

 工場地帯の傍を通り抜けているせいか車が多い。  その合間を縫うように聞こえて来たサイレンに、アキヨシは「プラントの方で火災って聞いたけど」とちらりと右手に並ぶ化学プラントを眺める。   「火事か……」  化学工業が多いだけに酷い火災にならなければいいな……と眉間に皺を寄せると、アキヨシがそっと手を繋いできた。   「怪我人が少ないといいな」 「……うん」  アキヨシと同じことを考えていたってことと、繋いだ右手の温かさに照れて笑みを零すとアキヨシはやはり同じような照れた笑顔をしている。 「やっぱりだ。ちょっと痩せただろう?」 「う……うん、風邪ひいてて」 「風邪⁉ それなら連絡を……って。……すまない」  忙しいと言って連絡が取れなくなったのはアキヨシの方だ。  遠慮せずに連絡すればよかったのかもしれなかったけど、仕事を邪魔しちゃいけないって言う思いや迷惑をかけたくないって思いがあったから、アキヨシから連絡があるまでじっと待とうと決めていた。 「俺のせいだな」 「違うよ! そんな酷い風邪じゃなかったんだ! 喉が痛かったからものが食べにくかっただけで……」  「な?」と、信じて欲しいと言うように同意を求めると、アキヨシは不承不承ながらこくりと頷く。   「そうだ、今度山に行かないか?」 「山ぁ? ピクニック?」 「登山、時々行くんだ。気持ちいいよ」  気持ちいいなら二人で布団の上の方がいい……と口を開きかけた時、前方から耳を劈くブレーキ音と衝突音が聞こえた。   「え!?」  そう声は出たものの、何ができたかと問われたら何もできなかったと答えるしかできないほどそれは一瞬だった。    ガシャァァァンッ!! と前方だけでなく左右からけたたましい音が響き、繋いだ右手の感触からはっとアキヨシの体がこわばって反応が遅れたことが分かる。  本能に近い部分で衝撃がくる! と全身に力を入れて固く目を瞑った瞬間、ハンドルを放棄したアキヨシがオレの上に覆いかぶさった。  迫りくる恐怖からただただ守らなければ と、アキヨシを庇うように腕を伸ばして……    オレの記憶は、そこで途切れている。  次に目が覚めると病院らしい部屋のベッドの上で寝ていて、姉が傍らでしくしくと泣いていた。  何とか動く目で辺りを見回して懸命に情報を得ようとするも、ベッド周りのカーテンが引かれていて外界からシャットアウトされているために何もわからない。  ただ、体中の痛みと、感覚のない左手だけはわかって……   「……ねぇ……さん?」 「圭吾? 圭吾!」  姉に伸ばした左手にはぐるぐるに包帯が巻かれていたが、痛みは感じない。  麻酔が効いてるんだろうか?  

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