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有罪 51

 一縷の望みをかけて携帯電話を新しくして……恐る恐る電話をかけてみたけれど、「おかけになった電話番号は現在使われておりません」と言う素っ気ない音声が返されただけだった。  わざわざ電話を解約する理由なんてそう多いわけじゃないから、認めたくなかった最悪のパターンを目の当たりにして、ただただ崩れ落ちるしかできなかった。  オレに残されたのは『akiyosi』と名前の掘られた指輪一つで、直前まで嬉しい気持ちで見つめていたアキヨシの入院に付き添うことも、生死の確認も、……葬式にすら出ることは叶わなくて……  共に生きたいって言ってくれていたのに、その手を振り払ってしまったんだって。 「アキヨシ……」  ぽつん と呟いたけれど、それははっきりと音にはなってくれなかった。  事故で負った傷跡と、すっかり緩んでしまった指輪を擦る。  あの事故からひと月ふた月経つうちに薄情なもので、いっそ死んでしまいたいと思っていたのに、何も考えなくなっていた。  いや、考えなくなっていたと言うより、アキヨシが死んだことを考えないようにしていた。  考えると、ぽっかりと胸の内に空いた洞を見つめなくてはならなくなるから……それから目を逸らしたくて……    貰った時はぴったりだった指輪が今ではもうぶかぶかで、気を付けていないと手を洗った瞬間に落としてしまいそうなほどだ。  ぶかぶかの指輪を引き抜き、丸く切り取られた景色を見るけれどそれは灰色にくすんで色を失ってしまっている。 「アキヨシみたいに、首にかけなきゃかなぁ……」  これまで無くしてしまったら泣いてしまう。  いや、泣くならもう目が溶けそうになるほど泣いたのだから、あとはもう死ぬだけかもしれない。  そう思うとこれを無くしてショックで死んでしまえば、アキヨシに会えるんじゃないかってナイスアイデアが降って湧いてくる。  我ながらなかなかいい考えなんじゃないかと自嘲の笑いまで出てくるのだから、これは本当にいい思いつきなんだろう。  そうすれば……この場からも退場できる。 「圭吾!」    こっちに駆け寄ってきた姉の茶色い瞳に、黒髪で慣れないスーツを着たオレが映っているのが見えた。  カツラのような黒髪に、借物と言って差し支えのないスーツ。  どちらも今までのオレの姿とはかけ離れていて、まるで別人のようだ。 「きてくれてありがとう!」  姉が嬉しげに声をかけてくれるけれど、オレは曖昧にしか返せない。  自分自身で浅ましいと思うのだが、幸せそうな姉をまっすぐ見るには勇気が必要だった。    

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