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有罪 62

「やっぱり! 泣いたな?」    まるでいたずらを見つけられた気分になって、慌てて顔を伏せて首を振る。 「な、泣いてない!」 「あ、そうなの? 泣いてたら具の肉を増やそうと思ってたんだけど」  そう言ってソーセージの袋を振られて……オレは観念してこくりと頷いた。 「お姉さんが結婚しちゃって寂しい?」  くすくすと小さく笑いながら店長は慣れた手つきでソーセージを切り、賄い用に用意してある具材と混ぜてさっと炒めていく。  普段はおしゃれな店内に火の通った玉ねぎやソーセージの香りが漂って、そのギャップに苦笑を零した。 「姉がー……姉は幸せそうでした」  最後に満面の笑みで送り出してくれて、ここにくるまでに携帯電話に届いたメッセージも感謝を伝えてくるもので、ただの文字の羅列だと言うのに幸せなのがわかるほどだ。  アキヨシの本性がどうであれ姉は今幸せそうにしているし、今後は姉に対して誠実に接していくと言っていた。  言葉のどこまでを鵜呑みにしていいのかは、騙されていたオレにはわからないけれど、アキヨシの行動が結婚前のお遊びと言うだけだったなら……  姉も知っていて、その上で結婚をしたと言うのなら夫婦以外の人間が口を出すことじゃなくなってくる。 「だから、やっぱりちょっと寂しいのかも」  はは と軽く笑い声を漏らす自分の前にとろとろの卵が震えるオムライスが置かれて…… 「ちょ……なんでハートマークなんですか?」 「可愛くない?」  ケチャップで描かれたハートはとろとろの卵の上のせいで少し歪だったけれど、それでもはっきりと形のわかるものだ。 「可愛いですけど  」  可愛さはいるのか?  正直、肉とボリュームさえあれば食べ物に可愛さは求めない と思いつつスプーンを取り上げて…… 「ああもう! 通じない!」  さぁ食べようとした時にそう叫ばれて何事だと店長の方を見ると、ちょっとすねたような顔をしてからすたすたと店の外へと出てすぐに戻ってくる。 「な、な、なんです⁉」 「臨時休業にしてきた」 「は⁉」  思わずガチャってスプーンを取り落として、行儀の悪い大きな音を立ててしまって大慌てで拾い直す。  どうして突然臨時休業なのか? バイトの休みの日にきてしまった自分が悪いのか? どうして店長はすねたような顔で隣に座るのかさっぱりわからず、目を白黒させて首を振った。 「これ食べたらすぐ帰りますから! なんでお休みにす   ん゛っ」  スプーンを取り上げられて、口の中にオムライスを突っ込まれれば言葉は喋れない。  もぐもぐと大きめに切られたソーセージを噛みながら、どうして店長に食べさせられているんだろうと崩れたハートマークに目を落とす。

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