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有罪 68

 オレは……やっぱり怖気づいた。  姉には幸せになって欲しいし、アキヨシに思うところはあるけれど……だからと言ってやっぱり不幸になって欲しくないと思う程度には、まだ未練があって……  自分の気持ちを優先させて留飲を下げたところで、それは自分勝手なオレだけの問題を二人に押し付けてしまった形になる。  オレがこの気持ちをうまくいなしきれないのはオレ自身の問題でアキヨシは関係なくて、ましてや姉に至っては巻き込まれ事故も同然だ。  これから二人で築こうとしている幸せな未来に、こんな出来損ないの弟が私怨で割って入って……それを壊してしまったら?  オレの幸せを願ってくれた姉を裏切ってしまう。 「……あの、店長」  呼び名が変わったことに恭司は驚いた表情を戸惑いに変えて、オレの方へと駆け寄ってくる。 「さぁ、行こう」 「……やっぱり……オレ…………」  二人の愛の巣に入って冷静でいられる自信もなかったし、姉とアキヨシの仲睦まじい様子を見る勇気もなかった。  捨てた男が目を前をちょろちょろすることによって、夫婦の間がぎくしゃくし始めたらどうする?    オレはそれを見てざまぁとは思えない。  姉の泣いている姿を見て、罪悪感に押しつぶされてしまうだろう。 「オレ、やっぱり、もういいです」  掴まれた腕を振り払おうとしてもびくともしない。  普段はふにゃふにゃとしたイメージで少しお姉っぽい言葉を話す恭司が、その時はどうしようもないほど獰猛な獣に思えて、恐ろしくなって身を捩る。 「それで、また泣く?」 「な……く……だろうけど……」  元々実家からは姉の新しい生活に関わるな と口を酸っぱくして言われていて、こうやって新居見学に……なんてことはするとは思ってもみなかったことだった。  姉から誘われても、のらりくらりと躱して関わらないようにして……姉の生活がいいものであるようにと遠くから祈る人生にしようと思っていたのだから、その通りにすると言うだけの話だ。  恭司の言う通り、オレは泣くだろう。  今までも散々泣いたけれど、きっと何かにつけてふと思い出して心の痛さに泣いてしまうだろう。  でも、それでいいと思えてしまえているのだから、覚悟だけで言うならできているのかもしれない。 「でも、もうそれでも……いっかって、思っちゃって……  っ!」  ぽつんと言った途端、ぐいっと視界がぶれた。  一瞬で肺から息が締め出されてしまったために、肋骨がぎゅっと痛みを訴える。 「ケイっ! 自分が今、どんな顔しているかわかってるか⁉」

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