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有罪 78
「 待たせてごめんね」
ノック音と共にドアが開いて、着替えを持ったアキヨシが顔を覗かせる。
「冷たいだろう? これに着替えて」
差し出されたのはコーラルピンクの柔らかそうなブラウスだ。
姉が好みそうな色と素材なだけに女性的で……どこをどう見ても女性用の服だった。
「いやっふざけているんじゃなくてっ……俺のものを思ったんだけど、佑衣子さんの服の方がサイズがいいから…………っ」
早口で説明されて、オレが何かを言う前に事情を語られてしまう。
確かに、オレとアキヨシとの身長差や肩幅を考えると姉の服の方がサイズはいいだろう……けれど、どうしてこんなピンクなのか⁉
「あ、これも! ……君には、こんな柔らかな明るい色が似合いそうだと思って持ってきたんだ」
真っ直ぐに、裏表のない顔で言われてしまうともうどうしようもなくて、仕方なくブラウスを受け取る。
「ご飯食べてる間に乾きます?」
「うん、大丈夫だよ、汚れ物を預かろうか」
さっとこちらに手を差し出したアキヨシが、はっとオレの胸元を見て固まった。
視線はオレの平らな胸……ではなく、鎖骨の辺り……鎖で吊るした指輪があるところで止まり、ためらうように揺れている。
「捨てなかったんだね」
そう言うとアキヨシの指はなんの戸惑いもなく指輪へと伸び、確認するように指先でくるりと弄んでから輪っかの内側を確認するように動かす。
こちらは裸で、アキヨシの行動はぶしつけで……なのに肌のすぐ傍にある熱にどっと心臓が跳ね上がる。
清潔な洗面所に飾られた花とか、使われている洗剤か柔軟剤の匂いとか、そう言ったものがいろいろあったはずなのにもうオレには目の前の存在しかわからなかった。
「 ──── どうして、俺の名前が入っているのか聞いてもいいかな?」
ひく と頬が引き攣る。
それをお前が聞くのかと怒りが湧いたのは一瞬で……目の前のアキヨシの中には自分がいないんだと思うと、そちらの方が感情を占めた。
「……いたずら かな」
「いたずら?」
問いかける言葉にこくんと頷き……オレができたのはそれだけだ。
俯いたオレから涙が落ちて、アキヨシの手に転がり落ちていく。
それを拭うように手が動いた時にも何もできずにじっとしていた、だから温かな手が頬に触れた時も涙を拭われただけだって思ってたし、覗き込むようにアキヨシがオレの目を見つめて来た時にも、もう泣き止んだかを確認しているだけだと思っていた。
熱い……火を押し付けられたんじゃないかって思えるくらい熱い唇が軌跡を残した時も……オレは、息を飲んでただただ突っ立っていた。
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