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有罪 79
オレを愛おしく見つめる目は間違いなくアキヨシのものだったけれど、それには本来のオレは映ってはいないし、映っていたとしてもこの男はわからないんだと思うと、アキヨシのこの行動がどれだけ軽率なものなのか、かっと怒りが爆発するのを感じた。
「あんた、何やったかわかってるのか⁉」
「……ケイ」
「ケイ君」と呼ばないことに笑いそうになる。
今でも耳に残る熱っぽい声を忘れてはいなかった。
「あんたはそんな風に呼ばなかった」
「⁉」
「カマかけたつもりかどうなのか知らないけれど、あんたの考えは間違ってる。あんたはオレのいたずらにまんまとハマったんだよ」
一気にまくし立ててやるとアキヨシの顔から一気に血色がなくなって……
「何を言っているんだ⁉ 君は……君と俺は恋人だったんじゃないのか?」
「姉の旦那と?」
さっと鼻で笑うようにして返すとアキヨシは怯えているのかためらっているのか、とにかくおろおろとした態度を取り始めた。
「んで、あんたは妻の弟に手を出そうとしてる人ってことだ」
「そ、れは 」
「あーあ、姉さん泣くだろうな、幸せにするって言ってくれてたのに可哀想~河原の父が知ったら会社の件も、どうなるかなぁ?」
言葉に緩急、強弱をつけてできるだけ厭味ったらしく告げる。
「それはっ!」
「じゃあさっきのはただの気の迷いで、俺は佑衣子を一途に愛していますってちゃんと聞かせてよ」
「駄目だ! その前に君とちゃんと話がしたい!」
「話がしたいからって、お義兄さんは弟にキスをするの?」
「…………」
細い指先をぱっと広げ、肌の上に沿わせながらつぅ……と胸から臍、更にその下へと移動させる。
指が引っかかって、スラックスがずらされて……
アキヨシは険しい表情をしていたが、目はそれを追いかけ続けている。
臍の下、少し色素の薄いアンダーヘアが見えて……
「や、やめっ!」
「どこで止めるのかと思った。オレはさぁ、こうやって男の人からかうの好きなんだよねぇ」
「何を言ってるんだ」
「二人の結婚が持ち上がった時に、オレがいたずらしたんだよ。あんたは忘れてるから覚えてないだろうけど」
人差し指でとんとんと傷のある辺りを指で示してやると、アキヨシはうろたえてさっとそこを押さえた。
「あわよくば、破談にならないかなって」
「なっ……この結婚には河原と西宮の……」
「だーかーらー途中でやめたんだろ?」
つんと言い放ち、アキヨシから着替えをむしりとってさっさと身に着ける。
ふわりと香ってくるのは姉の香りで……洗面台に映る自分はピンクカラーの服のせいか姉によく似ていた。
「ケイ!」
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