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有罪 81
外に出た途端、さっと視界が開けて小さな家や細い道路が広がる。
遠くの方には山もあって、天気が良くて雲一つないからか眩暈を起こしそうなほど青い大空が見えて……来る時は何も思わなかったのに、今この時の景色の良さがさっと心の中へと入ってきた。
「ケイ! 急いで! あいつが来ないうちに降りちゃうよ!」
そう言うと、景色を見てぼんやりとしているオレの手を引いて恭司がエレベーターに駆け寄った。
タイミングよく到着したエレベーターにオレを押し込めるようにして入ると、恭司は一階を連打して閉めるボタンを押し続ける。
エレベーターのガラス窓の向こうで、アキヨシの部屋の扉が開いたのが見え、さっとこっちを見て顔色を変えたのは確認できた。
もしかしたらその後、追いかけてきていたのかもしれなかったけれど、動き出したエレベーターの中からは見ることが叶わなかった。
もし追いかけてきていたとしたら、どんな顔をしていたのか……少し気にはなったけれど、そんな機会は二度と訪れないだろうと自分に言い聞かせる。
腕を掴んで、オレの希望通りにあの部屋から連れ出してくれた恭司がいる限り、オレを追いかけてくるアキヨシに会っちゃいけないんだって、心から思った。
姉から着信があった。
内容はきっとどうして帰るのを待っててくれなかったんだって言う話だろうから、そっと見ないふりをして携帯電話を放り投げる。
適当に投げた携帯電話がシーツの上を滑って、ベッドの端っこから落ちてごとんと言う鈍い音を響かせた。
その音が聞こえたのか、バタバタと恭司が駆けてきて扉を壊さん勢いで部屋に飛び込んでくる。
「どうした⁉」
「え……あ、携帯電話、落としちゃった だけ」
へへ と笑ってみせた顔は、再び鳴り出した携帯電話の振動音に見事に壊されてしまう。
二人の間で、携帯電話がいつまでも振動を響かせていて……
オレが動かないとわかっているからか、恭司はゆっくり進み出るとそれを拾って耳に当てた。
「あ、こんばんは。すみません……僕の仕事のことで急用ができてしまって、圭吾くんも一緒に帰ることに……この埋め合わせはしますので、ハイ! ぜひ! ありがとうございます、失礼いたします」
日本人らしく、携帯電話だと言うのに頭を下げつつ電話を切った恭司は、そのまま電源を落としてオレの傍らにそれを置いた。
オレの隣に腰を下ろして……ただ何も言わない。
何もなかったと言ったものの、恭司はオレとアキヨシの間に何かあったんだってわかっている。
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