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有罪 82
問い詰めることもできたはずなのに、それをしないのは恭司なりの優しさなんだろう。
「もたれる?」
「……」
「別にいいよ」
そう言って促すように頭を撫でられると、このまま甘えてもいいんじゃないかと思ってしまって、少しだけ肩に頭を寄せた。
微かにフゼア系の香水の匂いがして、それからじわりと染み込むような体温が追いかけてくる。
「……恭司の匂いがする」
「えっ……そりゃ、まぁ、俺のマンションだし」
何気に言った言葉に恭司はあわあわと焦ったような声を出した。
「くさ……い? 掃除はしているつもりだけど……」
「臭くない! 臭くないよ! いい匂いだなって」
「お、おぉ」
恭司は照れくさそうな言葉を漏らすと、感情をどこに持って行ったらいいのかわかないのか、指先を組んだりほどいたりしてせわしない。
「お昼食べそびれただろ? だから簡単なの作っておいたんだ。腹が減ったら……っ」
突然恭司にしがみつくと、つらつらと言葉を続けていた恭司が飛び上がって黙ってしまう。
耳を押し付ければ心配になってしまうくらいの脈拍が聞こえて、恭司のオレに対する好意の強さを教えてくれる。
今にも狂いだしそうなほど、恭司はオレを好きなんだ。
オレの中にまだアキヨシへの恋心があるってわかっているのに、それでもこうして付き添ってくれて、オレのことを考えて手を出さずに我慢してくれている。
話も面白いし、料理もうまくて、面倒見がいい上に顔もいい。
作ろうと思えば恋人になりたいと言う人間は多いと言うことも、知っている。
そんな人がどうして、オレの返事を待ってドキドキしているのか考えるとなんだか不思議な気分になってきてしまって。
「オレなんかの、どこがいいんです?」
「は……はぁ⁉ いきなり何言ってるの⁉」
「てん じゃなくて、恭司がオレのどこを好きかって聞いたかなぁって」
思っても見なかった話だったからか、恭司はぽかんと目も口も見開いて驚いた後で、ゆっくりと……「顔」と答えた。
「最初、か、可愛い子が面接に来てくれたなって」
「えっ⁉ その頃から⁉」
「その頃って言うか……外見が、可愛くて俺の好みで、面接で話を聞いたら、頑張り屋なんだって思った。自分一人の力で大学を出て、お姉さんを助けたいって言う目標がしっかりあるのが好感度高くて……」
自らが問いかけたはずなのに、真剣に答えられると面映ゆく感じて……
「あ、そ、なんだ 」
「それより何より、他人の幸せを考えちゃうところが、好き」
「す、好き……とか、そんな……」
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