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有罪 83

「ケイみたいな生活だと、周りに気遣う気力がなかったりするのにさ、ケイはハジメの弟達のことに気をかけて、お土産とか全部ハジメに譲っちゃうでしょ? 自分だってしょっちゅう腹空かせてるのに……」  ちょい と恥ずかしさに目元を赤くして、恭司がオレを覗き込む。 「ハジメの弟達、これ好きだろうからってどうぞって言えちゃうところ、好き」 「そ……そんなことないよ」 「それと同時に歯がゆい思いもしたけどね。ケイのために買ってきたお土産だったのに……とか」 「え⁉」  恭司はアウトドア派だからか、よくどこに行った、あそこに行ったと言う話と共にお土産をくれることがあって…… 「せめて食べるものには困んないようにって、日持ちして食事になりそうなものとか選んできてたのに」  そう言うと恭司はちょっと拗ねた顔だ。  バイト代として渡す金額にも限度があるし、ただ物を渡しても心苦しくなるだけだからそんな手段を取ったんだってわかって、平気でそれを人に譲っちゃってた自分の無神経ぶりにはっと飛び上がった。   「え……あ、ごめん!」 「いいよ、それがケイだから」  恭司はオレの手を取ると、まるで指の形、皺の数、肉の厚さ、骨の形を確かめるかのように、ゆっくりゆっくりと撫でる。  少しくすぐったいようでいて、温かくて落ち着いて……でも熱が染み込む度に落ち着かなくなっていく。  左手の薬指をくるくると撫でられた時だけ、ちょっと居心地が悪い気がしたけれど、それでも振り払ってまで……と言うこともなかった。  酷く居心地がいいと思うのは、アキヨシの手を振り払ってきたからなのだろうか? 「何度も言うけど、……俺はケイに幸せになって欲しい。ケイがお姉さんに望むのと同じように」 「え……」 「それを忘れないでね。……まぁ、その傍に俺も置いてもらえたら、もっと幸せになるようにするけどさ」  照れた顔を隠すようにうつむかせて、恭司はだから と続ける。 「やっぱり俺にしとかない?」 「……」 「傷心に付け込むようでカッコ悪いかな?」  小さく肩をすくめて尋ねかける姿は小さな子供のようで、思わずぷっと吹き出した。 「な、な……なに……」    突然吹き出されたらさすがに困惑したんだろう。  恭司はびっくりしたような戸惑ったような顔をして肩を跳ね上げてから、そろそろと手を引っ込めて曖昧な笑顔を浮かべる。 「冷めちゃうし、ご飯、食べよっか」  はは と空元気がわかる笑い声を出し、項垂れながら立ち上がる恭司の手を掴んでしまったのは意識してじゃなかった。

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