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第2話 禁術ニィド『支配』 R18/小お漏らし

 なんとか日が落ちる前に帰宅し、迎えた翌朝。簡単に食事と清めをさせ、僕は地下1階の実験室へ奴隷を連れてきた。 「昨日はよく眠れた?」  奴隷を実験用のテーブルに横たわらせる。首輪、手枷、足枷を順に、台の鎖に繋いでいる途中、彼の緊張を解すために声をかけた。 「…は、っ……はい」  かすれた声で返事をしてくる奴隷。僕はかがんでいた体を起こして、それの顔を見下ろした。 「名は?」 「アーリス…です」  前髪をすくって後ろに撫で付けてやると、汚れが落ちた分だけ、余計に顔立ちが整って見えた。相変わらず腰布一枚の貧相な出で立ちなのに、やたらと上品な雰囲気を持っている。  メガネもそこそこの品のようだし、これも彼の醸し出す上品さに、一役買ってるのかもしれない。どこぞの金持ちに飼われていたのは本当のようだ。  あの店主、このメガネを安物と思っていた上に、当の売値も安かったし…絶望的に目利きがないな。商人として致命的だ。 「じゃあアーリス、これから僕のことは『ご主人様』と呼んで」 「……はい、ご主人様」 「いい子。…ここは、僕が魔術実験を行うために建てた塔。君を買ったのは、実験を手伝ってもらうため。くれぐれも逃げたり、暴れたりせず、じっとしてるように。いいね?」 「か…かしこまりました」  困惑しつつも、すんなり受け入れる。アーリスは妙に大人しかった。普通なら暴れたり、憎まれ口を叩いたり、そうでもなきゃせめて、これから何が起こるかくらいは聞きたくなるだろうに。昨日あれだけ怯えてたから、ちょっと意外だ。 (裸同然の格好で台に乗せられ、厳重に拘束までされたのなら、もう腹をくくったってところかな) 「軽く触診するよ」  彼を試すのも兼ねて、洗ったばかりの体に手を添えた。腹からヘソを撫でて、太ももに滑らせていく。  細身ながらも、弾力のある肉付きだ。栄養失調の様子はなく、髪質や振る舞い方を見ても、やはり相当な金持ちの家にいたのがわかる。いわゆる上流階級のお付きというやつだ。 「…っ、ぅ、……ンッ」  下着をつけてない股の間をまさぐり、同時に腰布を解いて取り払った。アーリスは小動物のように震えだす。僕よりずっと背が高く、筋肉も充分ある大人の男なのに。 「ずいぶん可愛い持ち物だね。…ふふ」 「あっ…あ、ゃ……っ」  皮にすっぽり包まれて、縮こまっているペニスをくりくりと指先で揉んでみる。恥ずかしそうに顔を赤くして、アーリスは身をよじった。  見た目は立派な人間族の雄なのに、反応はまるで生娘だ。 「ぁうっ…!…は、ぁ…あぁ」  さらに緩急をつけてこねまわし、いやらしい手つきで触ってやる。徐々に固く膨らんできた。額に汗が浮かんで、目にかかるかかからない程度の栗色の前髪が、ところどころ顔に張り付いている。 「こういうこと、初めてなの?」  僕の手の中でビクビクと大きくなっていくそれを、やんわり扱きつつ、聞いてみた。 「ぁ、は…はい。はじ、めて……、です…っ」 「22歳だっけ?今まで仕事一筋だったんだね」 「…、っあぅ、…んんッ……~~っ!、くっ……ふ、…っ、」  歯を食いしばって首を振っている。恥ずかしいのか、何か隠し事か。  まぁ男性として初物であることには、嘘はないだろう。ペニスへの刺激に敏感すぎる。 (しかしこんなに従順な男が、どうして急に盗みなんてつまらないことをしたんだろうか)  そもそも、若干22歳で執事に出世しているのも、かなり不自然だ。アーリスは本当に22歳なのか?それにしては、顔立ちや言動が大人びすぎちゃいないだろうか。 (……違う。集中しろ。今更こんなことを考えてもしょうがないだろ)  自分を叱りつける。こんな思考は無駄だ。気になったことがあるなら、術をかけてからの方が簡単に聞き出せる。失敗したら失敗したで、アーリスに関わることはもうないのだ。あんな場所に売られた時点で、彼はとうに社会的に死んでいる。  僕は気を取り直して、目下のアーリスに意識を戻した。 「まだ余裕って感じだね」  すっかり勃起して、とろとろと汁を垂らしている亀頭を、皮をずらしてヌチョヌチョと音が出るくらいこねくり回す。 「あぁぁッ…ゃは、あぁっアッ…ん、それぇ…だめっ、だめですっ…うぅあっ」 「感じやすいね。どんどん溢れてくる」 「ひぃっ…い、ふぅう゛っ…く、あ……っ」  嬌声が切羽詰まってきた所で、ぴた、と手を止める。そのまま、先走りでドロドロになった指を彼の口にねじ込んだ。 「んぅ、っ…はふ、」  舌を挟んで好きにいじくっても、されるがまま口を開けっ放しにして、噛もうともしてこない。つくづく変な男だ。 「…君には男の矜持ってもんがないのか?」  威圧的に聞くと、涙目で縋るように見上げてくる。 「ぁふ…ひ、もうひ…っ、えぅ、も…もうしわけ…っぁ、あぁッ」  お仕置きの意味を込めて、空いてる手で慎ましげに立つ乳首を強くつねってやった。また耳心地の良い嬌声が響く。  本気で感じているのか、演技なのかはわからない。ただ好みの男がここまで乱れてくれて、悪い気はしなかった。胸がざわつく。  僕は自分の気持ちをはぐらかすため、これみよがしにため息をついてみた。気のせいか、一瞬だけ太ももがぴくりと動いたように見える。 「…気持ちよさそうだね」 「ぁ…、はンんッ…ごしゅ、ひっ…さま、あぁ…、ん、…あぐぅぅッ!」  つまんでくにくにと動かしていた乳首を、唐突にぎゅっと上に引っ張る。アーリスは背中を反らして苦しげな声を上げた。 「まったく。どこでそんな、色気のあるヨガリ声を覚えてきたの」 「ひっ…い、いた…いひゃい、れふ…ごしゅひ…ひゃま、お、おゆるひ、を……っ、ぁふ…っ」  否定しないのか。見た目や振る舞いから、上流階級出身の人間と見ていたのだが、元高級男娼という線も出てきた。 「僕を誘惑して、どうするつもり?」 「そ、そんな…ふ、…つもり、は……っ!!いッ……ぎぃ…、ひっ…もうひ、わけ、ありまへ…ごしゅひんはまぁ…っ」  乳首をぎゅうぎゅうと引っ張ってさらにいじめる。同じように舌も引っ張り、指で乱暴に口の中を犯していると、何度も「申し訳ありません」と舌っ足らずに謝ってきた。  一体なんなんだ、このしおらしさは。売られる前に拷問でもされたか、あの店主に調教でも受けたか。しかし、にしては目立った傷もない。水責めやくすぐりを使われたか?いや、どうにもしっくりこない。 「これだけ罵倒されて、痛くされてるのに…勃起したままなんて。アーリス、君はこういうのが好きなの?」  僕はカマをかけるつもりで、冷たく呟いてみせた。しおらしいふりをしてるだけの普通の男なら、さすがにそろそろ侮辱に苛立ってくる頃だ。 「……っ…あぅ…、」  しかしアーリスは頬を染めて僕を見上げ、ペニスをぴくぴくと動かしただけだった。新しい先走りがあふれて、つうと竿を伝っていく。僕に犯されたままの口からも、どっと涎が溢れてきて、顎に垂れていった。 「もしかしてアーリスって……変態…?」  耳元で囁くと、目を瞑って不自由な体をくねらせる。僕は身悶えるアーリスを見下ろし、口から指を引き抜いた。物欲しげに動く、皮被りの勃起ペニス。僕を見上げる艶っぽい瞳。  これはひょっとして…いや、そんなに都合の良いことがあっていいものだろうか。仮面の裏側で眉をひそめ、しばし唸る。 (確証がほしい。ためしに更に追い詰めてみよう)  僕はアーリスの唾液で濡れそぼった指を、白い股の間に滑り込ませた。会陰を撫で下ろし、後ろのすぼまりに潜り込む。 「ぅあっ!?」  ビクン、と体がはねて、アーリスが驚いた声をあげた。 「ここを使ったことは?」 「ん、…っは、はい……あ、…っい、いいえ……ッ!」 「なるほど、ココで男をくわえ込むのが大好きだったわけだ。初心(うぶ)なフリして、なかなか好き物だったんだね」 「…んひっ、ち…ちがいまっ……ぅ、あぁ、あぁあっ」  気持ちいい場所を探して、中をヌルヌル動かしていたが、アーリスはすぐに弱い部分を知らせてくれた。女みたいによがっている。 「さすがに久々だときつい?それともとっくにイキ癖がついてて、気持ち良すぎてつらいの?」 「あ、やっ…、そこ、やめ、っ…やめて、くだ…っあぁ、んっ……!」  しつこく同じ場所を何度も責めながら、僕はさらにアーリスを追い詰める。 「中の感触でわかるよ、ずっと使ってないのは。ご無沙汰の間はどうしてた?毎晩ここを一人寂しくいじって、今みたいにエッチな声出してたの?僕が同僚なら我慢できなくなりそう」 「う、うぅ…っも、やめて、くださ…ッも、もぅ……うぅ、つら…っ辛いんですぅ…ッ!」  ひっきりなしに涙をこぼすペニスを観察しつつ、僕はアーリスの弱い所をやわやわと撫で回した。話している間中こうだから、まともに質問を受け流すこともできないはずだ。ただただ恥ずかしそうに頬を染め、小さく首を振っている。  腰もやや浮いてきているし、気持ち良すぎて辛いのは間違いないようだ。 「お尻の穴でオナニーしてたのか聞いてるんだよ。これも実験の一部だから…答えて、アーリス」 「ひぐっ…、ぁ……んン、…は、はひっ!……しっ、してましたぁ…っ」 「もっとはっきり言って。『どこ』を使って、『なに』をしてたのか」 「…ぉ、オナニー…、してました…ッ!じ、自分の指をっ…お尻の穴に、入れて…っ、オナニー…してましたぁあッ…!」 「そっか…お尻を下品にぐちゅぐちゅかき回して、今みたいにいやらしく乱れながらオナニーしてたんだ。綺麗な顔してるけど、君もちゃんと男の子だね。アーリス」 「あぁ……っ、お、おゆるしを……ご主人様ぁっ…」  ひぃひぃ泣きながら許しを請う姿は、やたらに僕の嗜虐心をそそってしまう。二本の指で揉み込んでいた前立腺あたりを、ぐにっと押し上げて顔を近づける。 「やっあぁぁッ…、ぐ、うっ…ぁはぁあア…」  腰をがくがくと痙攣させ、もう少しで絶頂が見えてたであろう所で、僕は指を動かすのを止めた。 「イきたい?このままお尻の穴をほじくられて、チンポに一切触れられないまま、僕の手で恥ずかしく絶頂したい?」  わざと気持ちいい所から指をずらし、中で広げ、撹拌するように開いたり閉じたりさせる。物欲しげにぱっくり開いた穴が、くちゅくちゅといらしい音を立てていた。 「ひぃんン…ッ、んんぅ…おねが、しま…っ、ふ、…ご、ごしゅじ、さまぁ……」  すっかり僕に翻弄され、切なそうに腰をくねらせるアーリス。限界まで勃起したペニスが下腹部にへばりつき、ぴくんぴくんと動くたび、透明な汁を垂らす。 「君が本当はどんな人間なのか、君の口から言えたらイかせてあげる」 「わ、わたし、…は……っ」 「おっと、でもそれだけじゃ駄目。君を喜ばせるだけだろうしね。だから…そうだな、自分がどんな人間かを白状したら、次にかわいく『実験台にして』ってお願いしてみて」 「っ!!…あ、…その、それは……」  きゅう、と、尻穴のひだが僕の指をしゃぶるように締まった。 「最初に言ったでしょ?実験を手伝ってもらうって。魔術の知識もない素人に手伝わせることなんか、一つしかないよ。…ああ、勘違いしないで欲しいんだけど、君の同意なしで勝手に術を始めることもできる。被検体に自ら乞い願わせるのは、単なる僕の趣味」  話している間も、きゅんきゅんとひっきりなしに締め付けてくるメス穴に、僕は確信を抱いた。返事を待たず、話を先に進める。 「君にこれからかけるのは、僕が開発した特別製の…エッチな魔法。そんなものが存在したのかと思うだろうけど、僕の研究は禁術専門でね。人間に試すのはこれが初めて。でもきっと、君にはぴったりの術だよ。ね?アーリス……」  さっきのように指を動かし、アーリスにも聞こえるように、尻穴から淫猥な音を立てさせる。身悶えて、舌を突き出すアーリスの耳元に息を吹きかけ、僕は囁いた。 「四六時中体が疼いて、僕に犯されることばかり頭に浮かんで、それなのに射精一つ自由にならない。一方で、僕に命令されればどんな時でもイってしまう魔法……想像できる?」 「ぁ……っは、ぁ…っ」 「しかもただの絶頂じゃないよ。一度で頭がぐちゃぐちゃにとろけて、全身から力が抜け、涙や涎、あらゆる体液を垂れ流して味わう、とてつもない絶頂だよ。毎回、失神するほどの陶酔感と服従の喜びの中で、今まで味わったどれよりも深いイき方ができる。一度知ってしまったら、きっともう普通のイキ方では…満足できなくなってしまうだろうね」 「ゃ、あぁ…っ…はぁ……ア、ぅぅ…ッ」  僕の言葉一つ一つに可愛らしい反応が返ってくる。指を咥えこんだ尻穴は、すっかりとろとろにほぐれて、ひくんひくんと女性器のようにうごめき、立派なケツマンコに育っていた。 「もし頭で嫌がってても、どんなに恥ずかしくても、体は勝手に僕の命令に従う。裸になれと言われたらすぐに脱いで、三回まわってワンと鳴けと言われれば、ためらいもなくその通りにする。いつでも僕の下で淫らに鳴いて、僕からの射精許可を心待ちにしながら、僕に一生仕えるようになる。…素晴らしいと思わない?」  ぐにゅう…と、柔らかくなった女陰のような腸壁を旋回し、一番触って欲しいだろう前立腺のあたりを強く抉ってやる。返答を促すように。 「あぁあ…っは、はぃ…す、すばらしい、です…ぅ…ッ」 「ふふ。そうだよね?」  やはりか。もう疑う余地はないだろう。  アーリスは淫乱症のマゾヒストだ。しかもかなり根深いやつ。これは掘り出し物だな。 「ああ…上からも下からも、こんなに涎を垂らして。早くして欲しくてたまらないんだね」  せっかく乗り気になっている被検体に、わざわざ「成功の保証はないが」とは、教えてやらない。 「さぁ、それじゃあ…自分がどんな人間か言って。僕に可愛くおねだりしてみせて。そしたら人生最後の、『普通』の絶頂をさせてあげるよ」  文字通り、彼にとって人生最後の絶頂になるかもしれない。最悪の場合は全身が破裂し、肉片があたりに飛び散る大惨事になる。  さんざん脅して怯えさせ、恐怖で失禁しながら命乞いする被検体に、無理やり術をかけるというのも良かったが。アーリスは愛らしいので、そういう趣向は違う被検体に持ち越そう。  僕は耳元に寄せていた顔を起こし、目を合わせた。アーリスがごくりと、唾を飲み込む。髪と同じ栗色の瞳は、決意と情欲で、強く輝きながらも潤んでいた。 「ご主人様……っ、わたし、アーリスという人間は…。変態…なのです。痛いこと、苦しいこと、恥ずかしいこと…侮蔑や罵倒してもらうことにも、快感を見出してしまう、どうしようもない…変態、なのです」  うんうん、と頷いて髪を撫でてやる。 「今まで女性を抱くどころか、ご主人様のような…す、素敵な殿方に…組み敷かれ、このはしたない、お尻の…穴……に、男性器を入れてもらうことばかり、望んでいました。それなのに、相手を探すどころか、その一歩すら踏み出せず…。いつも一人さみしく自分を慰める、臆病者でした」 「そうなんだ」 「はい…。わたしは、臆病者で、淫乱な…変態、です。ですがどうか…お願いです、ご主人様。ご期待に添えるよう、精一杯がんばりますので…このアーリスめを、どうか、…どうかご主人様の実験台に、してください…!」  僕は頷き、必死の懇願をするアーリスという名の被検体に、仮面を外して微笑みかけた。 「あ……っ!」  僕の顔を見たアーリスが、小さく声をあげて驚く。  額、頬、顎、それらへまばらに浮かび上がる黒曜の鱗。赤い目、縦長の瞳孔。フードを下ろせば、長い白髪の間に生える尖り耳。  そう、僕は人間ではない。 「なかなか良い懺悔だったよ。…いっぱいイきな、僕の実験台」 「あっ、あっ、アッ…ごしゅじ、ご主人様ぁあっ…!」  尻穴に収まったままだった指を、二本から三本に増やし、イイ場所ばかりを擦り上げてやる。 「イくっ…イきますっ!ご主人様ぁっ…ご主人様の指がぁ…ッ!あぁッ…イイ、いきますぅうっ…」 「こんなにエロ汁零して…そんなに僕の指が気持ちいい?メスしこりに触れるだけで、次から次に先走りが漏れてくるよ」 「あぁ…いっ、言わな、でっ…くだ、あぁアッ…ひぃ、ゃはっ…ぁあン!」  アーリスは本気の激しい手マンに、ガチャガチャと枷を揺り動かして悶えている。顔を隠したいのだろう、両手はあいにく顔の横から動けないよう固定されているが。 「ほら、どうしたの?もっと淫らに腰を振って、情けなく射精してみせて」 「だめっ…、だめれすぅ…!も、もぅう…出ちゃう、出ちゃ…あっ見ないれくだ、ゃ、ああぁあアぁ~~~~ッ!!!」  勝手に揺れだした腰を止められないまま、無様に舌を突き出して、可愛い被検体は思い切り白濁液を吹き上げた。  僕は意地悪な笑みを浮かべ、射精中も、ビクビクと動いている穴を蹂躙することを止めなかった。 「やだぁあああッ…!!止めてやめてやめてくださっ…!あっ、ぁあアぁあ~~~!!」  やがて、苦しそうな泣き声とともに、アーリスの包茎ペニスから透明な液体が飛び出てくる。 「ひぃっ…ひっ、ぁひぃいい~~…ッ」  びゅ、びゅ、と飛び出る水のようなそれは、お漏らしのようにも見えるが、無臭だった。口の周りを涎まみれにして、アーリスは白目を剥いている。だが僕は、それでも彼を許さなかった。  奥の膀胱へ刺激がいくよう、長い指を潜り込ませて、裏側から徹底的に押し上げる。 「ぃぎっ!?あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!?」  ひときわ大きな叫び声と同時に、アーリスは噴水のようにお漏らしをした。射精して、潮吹きもして、ゆるんでいた尿道が一気に小水を撒き散らす。 「ひぃいいイ……ッうそ、なん…でっ…ぇ…」  じょろじょろ、じょろじょろと、僕が膀胱を押さえるたびにどんどん溢れてくる。  うつろな意識の中で尻穴だけを責め立てられて、子供のように失禁してしまう行為。上品なアーリスには耐え難い屈辱だろう。 「ひぐっ…ウ、うぅ~~…ッ」  事実を受け止めきれず、ついにアーリスは泣き出してしまった。 「よしよし、泣かないで。そんなに気持ちよかった?お漏らしするほど感じちゃったね」 「うっ…く、うぅ……ッ」  やっと出るものがなくなって、ぺたりと睾丸の上に倒れるアーリスのペニス。勃起していたら本来は出にくいはずなのに、漏らしている間は立ちっぱなしだった。恥ずかしくて、気持ちよくて、アーリスの精神はもうズタズタだろう。 「っ…ぅく…、ごめ、なさ……ぁ…あ、ぅンんッ」  ちゅぽ、と指を引き抜くだけで、大げさにビクつく。子供みたいに泣きじゃくりながら謝る、アーリスの頭に手を置き、なだめるようにゆっくり撫でてやった。 「初めてだもんね、他人にシてもらうの。びっくりしてお漏らししちゃっても仕方ないよ」 「うぅ…く……っ…」 「安心して。僕はそんな変態の君でも、可愛がってあげられるから」  頭を撫でながらそう言い聞かせてやると、ほっとしたような、とろけたような、緩んだ表情になる。本当に単純で可愛い。 「ぁ、あっ…んぐぅ!!?」  間髪入れず、左手の人差し指と中指と薬指をを再び尻穴へ、右手の中指と薬指を口の中へ、それぞれ台へ押さえつけるように突き入れた。 「では、実験を開始する。僕のために生まれ変われ、アーリス」  集中していた魔力を構築し、喉の奥から具現化させる。螺旋状になった文字列が、とぐろを巻いて宙に浮き、僕の手の周囲に沿って、アーリスの口と尻穴に吸い込まれていった。  ヴン、と鼓膜を叩くような音が響いた後、被検体は白目を剥いてガクンと一度痙攣し、失神した。僕はその体を隅々までよく観察し、異常がないか確かめる。瞳孔、脈拍、呼吸、今のところ全て正常。  下腹部には、子宮を模したようなデザインの淫紋が浮かんでいる。見た目だけは、成功したようだ。  次に、最も大事な意識確認を行う。 「アーリス、起きて」  頬に手を当て、軽く叩いて呼びかける。三度目くらいで、まぶたが動いた。やがて薄く目が開いたかと思えば、何度か小さくまばたきをする。 「僕のことがわかる?アーリス」  覚醒してきたところを見計らって、僕は顔を近づけた。目が合うと、やけに熱っぽい視線が返ってくる。 「ご主人様……ぁ…っ」  記憶に連続性は見られるようだ。 「自分が何者か、どうしてここにいるか説明できる?」 「はい。わたしは昨日、ご主人様に買ってもらった奴隷です。ここにいるのは、ご主人様の魔法実験の、実験台になるためです」 「ちなみにもう実験は終わったんだけど、直前の記憶はあるかな?」 「ええ…と、ご主人様にお情けをもらう代わりに、わたしの…恥ずかしい懺悔を聞いていただき、さらに自分から実験台にしてくださいと、お願いしました。その後、ご主人様に何度もイかせてもらって、本当のお顔も見せてもらい…。次に再びご主人様がわたしに触れたかと思うと、頭とお腹に…熱くて大きくて、ふわふわしたものが、沢山流れ込んできました」 「うん、それが魔法をかけた瞬間のことだよ。他に思い出せないこと、記憶が欠落してる部分とかは?」 「魔法をかけられた直後以外は、全て記憶しています」 「直後君は気絶したから、それは正常だ。じゃあ次は、君が奴隷になった経緯、あと隠し事などあれば…洗いざらい、詳細に話してみて」  アーリスは一瞬だけ口を開けて停止し、二、三回まばたきをした。 「はい、全てお話しします」  しかし、すぐにためらいなく『命令された』とおりに従った。  アーリスは、本当に包み隠さず全てのことをぶちまけた。  まず本当は28歳であることから始まり、丁重に謝罪を重ねた後、さる下級貴族の出であること、親が破産して借金のカタに貴族の屋敷へ売られたこと…それらを順に話していった。  アーリスは当初、売られた先で使用人見習いとして雇われた。扱いはよくある奴隷と同じで、使用人の中でも最下位の待遇だったそうだ。  まがりなりにも貴族だった頃の生活から一転、共同部屋の隅に雑魚寝で寝泊まりする、質素な生活が始まった。最初の数夜は、両親恋しさに一人、声を殺して泣いていたそうだ。  元は貴族の子息、温室育ちのお坊ちゃまだ。そんな子供に、当然最初から下僕のふるまいができるわけもない。何度もきつく叱られ、『旦那様』からお仕置きを受けたという。今まで受けた貴族教育、行儀作法の知識など、使用人の世界ではろくに役にも立たなかった。  しかしアーリスは、不思議とそれが嫌ではなかった。使用人としての作法を知り、質素な部屋で慎ましく過ごす毎日に、徐々に順応していった。いや、順応どころか、しまいには喜びを見出していた。下僕としての作法を叩き込まれながら、過酷な環境下で他者へ奉仕することに、全身が高ぶっていたという。  これこそ天が与えた役割だ。自分はこうして生きるために生まれてきたのだと、毎日真剣に教えを学んだらしい。  そんなある日、年上の使用人仲間の一人が、主人と庭先でしているところを偶然見つけてしまった。  初めて彼らの性行為を目撃した時、アーリスは性欲の自覚もないまま、ただその光景に魅入られた。そして自分も、あの使用人の男のようになりたいと思ったそうだ。  だがいつも叱られてばかりの自分が、他人に…ましてや主人に、相手にされるはずもない。小心者の彼は、湧き出た欲望をそっと自身の胸の内だけに隠した。  そして次第に自覚していく。自分が普通の人間とは違う、歪んだ性的嗜好を持っているのだと。  それから何年も、歪んだ欲望を隠すために、アーリスはがむしゃらに働いた。気付けば使用人としての能力を誰もが認めるようになり、アーリスを買った『旦那様』は、彼を執事として取り立てると言った。  もう誰も彼を叱ってはくれない。誰もアーリスをお仕置きしてはくれない。情欲だけを溜め込んだ状態のまま、アーリスは執事としての仕事を続けていた。  そこからまた状況は変化する。  執事という立場になってから、3年が経過したある日のこと。アーリスは、同僚がとてつもない失態を犯したことを知る。  普段は触れることを禁じられていた金庫の、中身の一つであろう書物。それが書斎の机に出しっぱなしになっていたのだ。室内で花瓶を取り替えていた同僚は、誤ってそれに水を零してしまった。慌てた彼は、執事であるアーリスに相談を持ちかけた。豪華な装丁の書類束だったため、芸術品か何かの冊子だと思ったらしい。  当初は落ち着いて対処するよう同僚をいさめ、中身を乾かそうとしたのだが。  中を見て、今度はアーリスが慌てる番だった。普段は冷静に振る舞うよう徹底していたのに、彼の前でひどく取り乱してしまったという。誰にもアーリスの変態的嗜好はバレていなかったが、そちらが露呈する方がよほどマシだったとさえ彼は言った。  それもそのはず、当の書物は、商家を営む当家の裏帳簿だったのだ。  脱税や贈収賄に資金洗浄、ありとあらゆる汚職の証拠が記載されていた。自分を拾ってくれたこと、昔はよく叱ってお仕置きしてくれたこと、それらを差し引いてもアーリスは純粋に、名家の当主としての『旦那様』を尊敬していた。だから余計にショックだったと語る。  まず同僚には、自分の失態として処理するからと、厳重に口止めをした。その上で、中身の内容を伏せた。そして『旦那様』に、裏帳簿を見つけてしまったこと、水で汚してしまったこと、今後このようなことは止めてほしいということを、順に話そうと決意した。  ところが外出から戻った『旦那様』は、書斎に引っ込んだ直後、反対側の階段を登るアーリスと入れ違う形で、アーリスの部屋に行った。他の使用人は全員いるのに、アーリスだけがいない。裏帳簿は消えた。『旦那様』の疑念が確信に変わるのは早かったという。  廊下で鉢合わせた『旦那様』に襟首を捕まれ、引きずられるようにして書斎へ連れて行かれた。アーリスの手には、布で包まれ、綺麗に乾かされた裏帳簿。  何が起こったのか、最初は理解できなかったらしい。それくらい強く平手打ちを食らわされたと。  ―――「信じていたのに」「裏切り者」「盗人」「誰が面倒を見てやったと」「脅すつもりか」。  矢継ぎ早になじられ、痛みと驚きで口を挟む余裕もなかったという。そんな状態で倒れ伏しているアーリスを足で踏みつけ、『旦那様』は迅速に対処した。  二人の屈強な護衛に衣服を剥ぎ取られ、縛り上げられ、声も出せないよう猿轡を噛まされ、終いに目隠しまでされて、大きな麻袋らしきものに詰め込まれた。 『本当なら死ぬまで拷問してやるところだが、最後の情けだ』  そう言った『旦那様』の声が、アーリスが聞いた最後の、大恩ある主人からの言葉になった。  打ちひしがれ、抵抗する気力も失い、ぐったりとされるがままに、アーリスはモグリの奴隷商へ引き渡された。なんとか汚職など止めて欲しいとだけは伝えたかったが、そのための口はとっくに塞がれていた。そして、いやそれ以前に、と思い立つ。  『旦那様』は、はじめからアーリスの話に聞く耳を持たなかった。10年以上も勤めた使用人の言葉より、状況証拠と裏帳簿の方が『旦那様』は大事だったのだ。  もう何を言っても無駄だと、諦めるしかなかった。  ぐす、と、一度だけ短い嗚咽を挟み、アーリスはその後の話を続ける。  奴隷商にタダ同然で引き取られたアーリスは、店主に「見た目はまぁまぁだが、こんなに年増では高値がつけられない」となじられた。元々客足の少ない店だったせいもあり、4日間、買い手がつかなかったそうだ。  5日目にして値札は書き換えられ、22歳と偽りの年齢も足された。なるべく顔が見えないように、檻の隅に縮こまっていろと命令されて。 「…以上が、わたしがご主人様に買っていただけるまでの、全ての顛末です」  なるほど、と僕は頷いた。  さすがにこの長話を、即興で作れるとは思わない。どうやら実験は、おおむね成功したと思っていいみたいだ。アーリスは僕と出会って間もないのに、本当に『全てのこと』を話し切ってしまった。大切な思い出、恥ずかしい秘密、元雇用主の重要機密まで、洗いざらい。  じゃあ次はいよいよ、人格やプライドを無視するような命令も聞けるかどうかだが…。  正直、アーリスの長話を聞く中で、もう確認は必要ないんじゃないかと思い始めていた。術が効いていようといなかろうと、アーリスは生粋の下僕気質で、従属に喜びを見出すタイプの人間だ。僕に逆らう姿が全く想像できない。そればかりか『旦那様』への愛着も、綺麗に断ち切られているように見えた。 「枷を解くけど、まだ動かないで。動いたらどうなるかくらいは君も…ああ、予想以上に濡れちゃってる。ずいぶん派手にやったね」 「も、申し訳ありません、ご主人様。事が済んだらすぐにでも、綺麗にお掃除させていただきますので…っ」  その時のことを思い出してか、顔を真っ赤にして、アーリスはオロオロと僕の動向を伺っていた。枷を全て取り払っても、言われた通りにじっとして、不安そうに僕を見上げている。 (ああ、可愛すぎるよアーリス。ごめん、やっぱりちょっとだけ遊ばせて)  実験とほんの少しの楽しみのために、僕は短く命じた。 「おすわり」  僕の声を聞くやいなや、アーリスは弾かれたように起き上がった。ただし、汚れを飛び散らせることのないよう、あくまで静かに、慎重に、テーブルから降りていく。  そして床に手をつき、股を広げてしゃがみ、完璧な犬の『おすわり』ポーズで再び僕を見上げた。屈辱的な命令がよほど嬉しかったのだろう。ペニスを勃起させ、とろけた顔は口が半開きになっている。  恥じらう隙もなくこんなことが出来るなら、おそらくもう術は完全に…だめだ、口が先に動く。 「今から人語は禁止。犬みたいに鳴いてみて、アーリス」 「…わ、わん」 「どうしたの?もっとはっきり鳴いてごらん」 「わんっ!わんっ、わ……わぅ。くぅん。くぅ~~ん…っ」  僕が命じ、行動させられる度、ペニスをピクピクと動かして切なそうに応じるアーリス。 「チンチンは?アーリス」 「わぅん…」  これもためらいなく実行した。両手を顔の横に掲げ、しゃがみ姿勢の方のアップというやつだ。はち切れそうなほど膨らんだ包茎ペニスが、いつの間にかしとどにおつゆを垂らしている。 「じゃあそうだな…ベグはどう?わかる?」 「く、くぅん」  腰を振りたくなるのを我慢しているのか、太ももをがくがくさせながら、アーリスは仰向けバージョンのチンチンをした。両手はさっきと同じ位置、両足は玉の裏まで丸見えになるよう、膝を折って開いている。ベグで通じるのか、賢い犬だ。 「よしよし、いい子。もう一度おすわり」 「わぅぅっ…」  体を起こす際、ぷりんとひるがえったペニスが太ももを叩いていた。きついだろうが、動きを止めることもできないまま、おすわりに戻る。 「よし。それでは人語を許可する。どうやら君はもう、僕に逆らうことはできないようだ。逃げたり隠れたりもね」 「はい…。今のご命令で、身にしみてわかりました。ご主人様」  幸せそうにほほえみ、僕を見上げるアーリス。自分の性欲のせいで脱線しかけたが、最も重要な事実を再確認すると、かつてないほどの満足感が込み上げてくる。  ついに長年の成果が実を結んだのだ。しかも初の実験で。 「実験は成功だ、協力してくれて感謝するよ。…君のお腹のあたりを見てご覧、触って自分でも確かめるといい」 「あ、あぁ…これ、は……っ」 「それが、君が僕の所有物である証。気に入った?」  アーリスは「はい」と頷きながらうっとりと淫紋を眺め、そこを愛おしげに撫で始めた。 「強固な術式だから、もう解除できない。たとえ僕が死んだとしてもね。つまり君はこれから一生、僕に仕えることになったんだ。わかるね?」 「…はぃ、……っ…、ご主人様…」 「その淫紋、子宮に似てると思わない?まぁ実際に子宮ができたわけじゃないんだけど、それでも面白い副作用があるんだよ」 「………?」 「君のお尻の穴はね、膣のように濡れるようになり、奥は子宮口のように感じやすくなった。男性機能を維持したままね」  言われてようやく気づいたのか、とっさに下を向いて確認している。やけに湿っぽくなって、さっきからタラタラと汁を垂らしっぱなしにしているお尻の穴を、やっとアーリスも認識したようだ。 「変態の君には、ご褒美にしかならないかもしれないけど」  僕の物言いが、アーリスの奉仕欲を刺激したのだろう。彼は嬉しそうに目を細め、ゆっくりと僕の足元に跪いた。 「実験のご成功、おめでとうございます。わたしはこれから未来永劫、ご主人様の物です。どうぞ…なんなりと、ご命令ください」  全裸で床に額を擦り付け、そんなことを言われると、さすがの僕もにやけ笑いが止まらなくなってしまった。  これだ。これが見たくて研究したのだ。  初対面同然の相手に、瞬時に発情して足元にかしずく下僕。しかも、アーリスのように育ちも良くて大柄な美丈夫が、となると、余計にそそられるものがある。  目的は金でも、権力でもない。純然たる性欲と好奇心が、僕をここまでさせた。  神の使いとまで呼ばれ、国家の支配階級にしか存在しないはずの竜族。  その一員であるはずの僕が、全てを捨ててまで探究した魔術の集大成。  汗ばんできた拳を握りしめ、僕は足元で土下座しているアーリスに命じる。 「では、靴に誓いのキスを」 「はい、ご主人様」  アーリスはすぐさま僕の靴のつま先に唇を寄せ、ちゅっと音を立ててキスをした。 「じゃあ…次の実験の準備をしよう。手伝ってくれるよね?」 「はい。その際はまたわたしを、実験台にしてください。ご主人様」  顔を上げたアーリスは、服従の快楽にドロドロに溶かされた、マゾ奴隷の顔で僕を見ていた。

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