2 / 6

第2話

 そんな風に初めてはっきりと自分の意見を言った顕に、叔父も折れてくれ、僕たちはついに2人だけで花火大会へと繰り出せることになった。お小遣いをいくらかもらって、2人で意気揚々と会場となる川のほうへと向かった。  屋台と、近くで見る花火。それらに気が急いてならない僕は、じきに駆け出して、その後ろを顕が追いかけた。 「顕。早くしないと、始まっちゃうよ!」 「待ってよ、寛人。」 「早く早く。僕、あんず飴食べたいし、あと焼きそばも。花火が始まる前に買わなくちゃ。」 「分かったよ。寛人は足が速いなあ。」  顕は口ではそう言ったが、すぐに僕に追いついて、息を切らせているわけでもなかった。それどころか、いつの間にか前を歩いていて、「あんず飴の屋台、あったよ。」と手招きをしてくれた。  運動嫌いを自称する顕は、しかし、決して運動音痴ではなかった。走ればそれなりに速かったし、キャッチボールやサッカーめいたことを2人でしても、下手だと思ったことはなかった。顕のほうは「僕なんかとやってもつまんないだろ?」と口にすることはあったけれど、実際は、本気になったら顕のほうが器用に何でもこなせた。おそらく顕は身体を動かすことではなくて、他人と競い合って勝ち負けが決まる、ということが嫌だったのだ。それに気づいたのは、もっとずっと後、僕が顕と同じ高校に入学してからのことだ。  高校に入ると、顕は大抵成績上位者の中にいた。上位20番までは名前が貼りだされるのだ。一度は2位にまでなって、僕が「次は1番になるしかないね。」と言うと、「1番にはなりたくない。」と言った。 「どうして?」 「恨まれたり、嫌われたりするから。本当は20番以内にもなりたくない。名前を貼りだされるのも嫌なんだ。」 「贅沢なこと言ってるなあ。」  僕は笑ったが、顕は笑っていなかった。  そもそも、おかしな話だった。顕の家の近くには、僕の高校よりずっと頭の良い奴が行く高校があった。顕の成績ならそこにだって余裕で入れたはずだった。にも関わらず、ランクを落としてこの高校に入った。その理由も「目立ちたくないから」。  聞けば必ず「すごいですね、優秀ですね。」と言われるに違いない高校が嫌だったのだと言う。制服も少し特徴があって、それを得意気に着て闊歩するのがその高校の生徒で、そういった校風も肌に合わないと感じたのだと言う。

ともだちにシェアしよう!