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第23話 深く暴く熱
真山は波打つシーツの上に横たわり、初めて身体を重ねたあの夜と同じように、自ら脚を抱えて締まった尻の肉を両手で割り広げた。うっすらと汗滲む肌に、指が食い込む。
ひくつく窄まりも緩く頭を擡げる性器も晒す。湧いてくる羞恥すら、今の真山には快感をより濃くする刺激でしかない。
視線を持ち上げると、桐野の喉仏が動いた。
「かわいい、慎」
甘やかな声とともに真山を見下ろす瞳は、薄暗い寝室でもなおわかるくらいに熱を孕んでぎらついていた。
自分に向けられる欲望に、真山は息を呑む。高まるばかりの期待は胸の鼓動を早めるばかりだ。
ひくつく窄まりに、桐野の逞しい猛りの先端がそっと押し付けられる。
そこには二人を隔てる薄い膜はなく、剥き出しの熱がとろける蕾に触れた。
「っひ、あ」
真山は引き攣った声を上げた。膜越しではない、そのままの熱が触れるのは初めてだった。
生々しい感覚に、真山の口にはすぐに唾液が溢れる。喉を鳴らして飲み込み、小さく吐いた息はひどく熱かった。
柔らかく綻んだ蕾は桐野に歓喜を伝え、中へ誘おうと先端にしゃぶりつく。
桐野の猛りが焦らすようにぬるつく蕾に擦り付けられる。
「ふあ、なん、でぇ」
くすぐるようなもどかしい快感に、真山は声を甘く溶かした。早くほしいのに、桐野は揶揄うように段差で蕾を引っ掻くばかりだ。せつなげに非難の声を上げる真山に、桐野は笑う。
「すまない、意地悪をした」
揶揄われたのだとわかっても、悪い気はしなかった。
「慎、入る、よ」
宥めるような低く抑えられた声がして、窄まりが押し拡げられる。今までの誰のものよりもそれは鮮明で、真山は声を上擦らせた。
「あ、ぅ、はい、っ、て」
張り詰めた先端が蕾を押し拡げ、真山は目を見開く。熱いものがゆっくりと押し入ってくる。
真山は堪らず熱く震える吐息を吐く。
隘路を押し拡げ進む桐野の猛りを、真山の熟れた粘膜はひくつきながら迎え入れた。
「っ、君の中は、熱いな。溶けそうだ」
桐野は喉から絞り出すように低く唸る。その声には桐野の感じる快感がはっきりと滲んでいて、真山は息を呑んだ。桐野が自分の身体で快感を得ていることが嬉しかった。
奥へと進む桐野にしこりを押し潰され、真山は腰を震わせた。
「ッ、きもちい、そーいち」
芯を持って勃ち上がった真山の昂りは、震えながら透明な蜜を止めどなく垂らし、根元の茂みまで濡らしていた。
真山の声に応えるように、桐野はゆったりと中を擦る。熱いものに粘膜を撫でられ、真山の薄い腹がひくりと震えた。
丸く張った先端で擦り潰され、段差で弾かれて、熟れたしこりを容赦無く嬲られる。
「ふぁ」
それは容易く真山を高め、絶頂へと導く。
「っはぁ、いく、出る、そ、いち」
「出してごらん、慎」
そんなふうに優しい声で誘われたら、溶け出した理性ではとても抗うことなどできなかった。
「は、あ」
甘やかに許された真山は緩く腰を揺らし、昂りから白い濁りを放つ。迸る白濁は真山の腹から胸にかけて散り、上気した肌を白く汚した。
真山の中は桐野のかたちがわかるくらいにきつく収縮し、締め上げる。
同時に桐野が息を詰めた。
吐精してもなお、真山の昂りはおさまらない。桐野もまた、甘えるように絡みつく真山の中で質量を増した。
「ッ、お、きい」
「慎の中が、気持ちいいからだ」
桐野の端正な顔は、内から湧き出す劣情を隠しもしない、荒々しさすらある雄のものになっていた。
「慎、ずっと、こう、したかった」
桐野は真山から視線を離さない。薄茶色の瞳は灼けるような熱を孕んで、真山の胸を炙る。
「今までの分も、してよ」
煽るように誘うように、真山は腕を伸ばして桐野の頬を撫でる。
「ああ。君の一番奥まで、溢れるくらい注いでやる」
桐野の瞳の深くに炎が揺れた気がして、真山は息を呑む。骨の髄まで食い尽くすような獣じみた目が自分を見ていることに、真山の中に喜びが湧き上がり、甘い疼きとなって腹の奥をせつなく震わせた。
真山の膝裏に手を掛け脚を拡げさせた桐野は、真山の体を折り曲げ、体重をかけながら猛りをゆっくりと奥まで埋めていく。
苦しい体勢だというのに、桐野に腹の中を征服されていくような感覚に、真山は濡れた息を漏らす。
桐野に全て委ねて、真山は震える昂りの向こうに見える桐野の猛りをうっとりと眺める。
小柄で端正な桐野の外見に不釣り合いな逞しい怒張が、ゆっくりと真山の中に収まっていく。熟れた粘膜を擦りながら進み、丸く張った先端が奥の窄まりに当たっても、まだ全ては収まっていなかった。
桐野はゆっくりと出し入れして段差でしこりを弾き、弾力のあるいきあたりの襞に丸く張り詰めた先端を押し当てる。
「慎、入らせてくれ」
襞の先は、まだ誰とも試したことはない。自分で玩具で試したことはあったが、襞を超えるのが怖くてそれから試していなかった。
あのときは怖かったのに、桐野にそこを捏ねられると期待が膨らむ。桐野にそこを拓かれるのが楽しみで仕方なかった。
桐野に、初めてを奪われたい。まだ誰も知らない、自分ですら知らない場所を、桐野に拓かれたいと思う。
そんな真山の奥の窄まりを、桐野は何度も優しく叩いた。熱い質量を何度も押し付けられ、生まれる快感に奥の襞は少しずつ緩んでいく。
「っは、きもちい、あ、おく、はいっ、え」
奥の襞を叩かれるたび、真山のそこは桐野を受け入れようと媚びるように吸い付いた。
「ふふ、こんなに甘えて」
桐野は緩やかに腰を回し、どこか楽しげに逞しい先端で真山の奥の窄まりを捏ねる。
しゃぶりつく肉襞はすっかり緩み、今にも桐野の先端を飲み込みそうだった。
腰を揺する桐野が一際強く突き上げると、くぐもった音とともに先端が最奥へと潜り込む。
「ひ、ぁ」
喉を引き攣らせた真山の白い腹が透明な飛沫で熱く濡れた。
まだ誰も踏み込んだことのない真山の襞の奥へ、桐野の猛りが到達する。
奥をこじ開けられる快感は嵐のようで、真山の目の前は白く爆ぜ、星が散った。
「は、ひゅ」
真山は胸を大きく喘がせ、浅い呼吸を繰り返す。空気を求めて開けた口からは、吐息と掠れた喘ぎが漏れた。
真山の最奥は丸く張り詰めた桐野を離すまいと先端にしゃぶりつき、深々と咥え込む隘路は喜ぶようにきゅんきゅんと桐野を締め上げる。
身体の芯が溶けるような甘さと脳髄を灼くような熱さに、真山の身体は歓喜で満ちた。
「っ、はいっ、た」
吐息のような桐野の声がした。
桐野の腰がぴったりと真山の尻に押し付けられて、戦慄く蕾をざらりと擦るのは桐野の下生えだった。桐野の怒張が根元まで胎の中に収まったことを知って堪らない気持ちになる。
桐野は腰をゆったりと回して、丸く張った先端が真山の一番奥の柔い壁を捏ねる。
はらわたを捏ね回されるような感覚は苦しいのに、その向こうにはうっすらと快感の気配がある。
薄い快感は漣のように全身に広がって、少しずつ濃くなって、真山を頭の芯までとろとろに溶かしていく。
「慎、動いて、いいか」
桐野の低く唸るような声に、真山は何度も小刻みに頷く。桐野に与えられる快感を思って、真山の中で期待が膨らむ。
桐野にしゃぶりつく真山の一番深いところで、桐野は亀頭を扱くように小刻みに腰を揺する。陥落した襞を小刻みにくぽくぽと嬲られ、真山は背を弓形にしならせ、喉を晒した。
意識を白く染める強い快感に、真山は声すら上げられず、身体を反らした。
脚が勝手に揺れる。
全身に伝わる快感の波は、大きなうねりになって真山を呑み込んだ。
「ひ、あ」
上擦った声が漏れ、薄い腹がひくついて、また腹を熱い飛沫が濡らす。
小刻みに襞を嬲られると真山の身体は溢れる多幸感に包まれ、痩せた身体が勝手に跳ねた。
真山の喘ぎはすっかり快感に浸されて言葉の体をなさない。しなやかな脚はつま先までピンと伸ばされ、不規則に痙攣して虚空を掻くように揺れた。
真山は何度も上擦った声で啼いて、内に溢れる快感を訴える。
白飛びして薄れた真山の意識は、中で桐野が動くたびに生まれる快感に引き戻される。
「そ、ち、ひゃ」
「慎」
真山を揺さぶる律動は不意に止み、真剣で熱の込もった声とともに手のひらで頬を包まれる。見上げた瞳もせつなげな熱を孕んでいて、桐野が抑えつけていた気持ちの大きさを思い知らされ、胸が締め付けられた。
身体を小さく折りたたまれて窮屈で苦しいのに、桐野の温もりと匂いが近くて、真山は喜びに震えた。
桐野の匂いを肺深くまで吸い込んで、真山は酩酊感にも似た眩暈を覚える。
「しん、君がオメガになったら、ここのおくに、君の子宮ができるんだ」
言い聞かせるような甘く低い声とともに、最奥の肉壁を捏ねられて真山は吐息を震わせた。静かな桐野の声が、深く脳髄まで染み込んでいくようだった。
そうやって具体的に言葉にされると、ぼんやりしたイメージが腹の中で形になっていく気がする。
胸に溢れるざわめきは止まらない。
桐野はゆっくりと腰を押し付けるように回し、真山のはらわたを捏ねるように最奥の柔らかな肉壁を押し上げる。異物感もはらわたを捏ねられる苦しさも、もはや見る影もない。そこから生まれてくるのは真山を優しく溶かす毒のような濃い快感だった。
「っ、あ、し、きゅ……?」
知識はあるのに、快感に染め上げられた真山の頭はまともに働いていない。
聞き返す舌っ足らずな真山の声に、桐野は愛おしげに目を細めた。
「そう。君と僕の子が宿る場所だ」
桐野の穏やかな声に、真山はうっとりと微笑む。
オメガの証だ。オメガには、男にも子宮がある。真山がオメガになれば、今桐野の先端が当たっている辺りに、子を孕むための部屋が作られる。
知っているはずなのに、桐野にそうやって優しく説かれると、何だか特別なことのように思えた。
「っ、あ、うれし」
昂りきった身体に吹き込まれる桐野の言葉は真山をざわめかせる。
ずっとほしかったオメガの証。それが、桐野によってもたらされようとしている。
腹の中は真山の悦びに呼応するようにずっと甘く切なく疼いて、本当に作り替えられているのかと思ってしまう。
「僕も嬉しい。慎」
何度も最奥をいじめられて、真山の昂りは壊れたように透明な体液を吐いては薄い腹を濡らした。
もはや真山の身体は桐野に与えられる快感しか拾い上げなくなっていた。桐野に何をされても、快感に変えて真山を高みへと押し上げるばかりだ。
「そ、いち」
唇から溢れる声は掠れ、上擦る。
真山が縋るように見上げると、視線を受け止めた桐野は柔らかく微笑む。
桐野の瞳に獰猛な光が揺れるのを、真山は気付いていた。
「君がオメガになったら、つがいにして、ずっと、ぼくだけのものにする」
「ン、い、よ」
そんな獰猛で甘やかな欲望を聞かされて、真山は表情を甘く溶かした。
真山を身体ごと揺さぶる、桐野の力強い律動が始まった。
「ッ、あ、そ、ち」
真山は桐野の律動に身を委ねる。浅瀬から最奥まで、歓喜に震える真山の胎を逞しい桐野の猛りが出入りする。段差は熟れた粘膜をこそぐように撫で、しこりを弾いて、陥落した襞を抜けて柔い最奥を押し上げ、真山の臍の下をうっすらと膨らませた。
「しん、ここまで入ってる」
艶のある笑みとともに桐野にそっと腹を撫でられ、真山は腹の中を戦慄かせ、濡れた瞳を揺らす。
「ん、う、れし」
桐野に最奥まで拓かれて、真山は歓喜に震えた。
「出して、いいか」
「ん、だして」
桐野に優しく征服される。真山はそれを望んでいた。
桐野が容赦なく腰を打ち付ける。
繋がった場所は濡れた音を立てて桐野を咥え込む。
なだらかな隆起の見える桐野の腹がひくりとふるえ、真山の一番奥で熱が爆ぜた。
「ッ、ひゃ」
噴き出す熱い白濁が柔い肉壁に打ち付けるように浴びせられ、真山は中に放たれる熱に感じ入った。
熱から生まれる幸福感が真山の脳髄まで痺れさせる。桐野の脈動を感じる腹の中は全部気持ちよくて、それだけで真山は緩やかな絶頂を迎えた。
戦慄く胎は桐野の吐き出す熱いものをよりはっきりと感じる。真山はすっかり蕩けた笑みを浮かべ、桐野を見上げた。
眉を寄せ、目を伏せて吐精の快感に震える桐野が見えた。うっすらと頬を赤くし、腰を揺する桐野から目が離せなかった。
「しん」
静かに瞼を持ち上げた桐野の、吐息のような声に呼ばれる。
「なに……?」
「たりない。もっと、君の奥を、僕で汚したい」
熱を帯びた真摯な眼差しが降り注ぐ。真山に向けられる桐野の真っ直ぐな欲望は、簡単に真山に火をつけていく。もっと欲しいと、はしたなく喉が鳴る。
「ん、いいよ。して。そーいち」
欲に濡れた笑みを交わし、唇が触れ合う。
ゆったりと始まった桐野の力強い律動に声を抑えられるはずもなく、真山はふやけた声で啼いた。
「んあ、そ、ち、きもちい」
「っ、僕も、だ」
真山のひくつく後孔を溢れるもので白く汚して、桐野の怒張が出入りする。掘削するように柔い粘膜を抉る桐野の逞しい雄を、真山の媚肉は甘やかに締め上げた。
最奥を突き上げられてもそこに苦しさはなく、訪れるのは真山を芯まで溶かす甘やかな絶頂ばかりだった。真山は掠れた声で快感を訴え、涙で頬を濡らした。
繋がった場所が溢れた白濁で泡立ち、伝い落ちてシーツを汚すくらいに、桐野は何度も真山の中に欲望の証を注いだ。
オメガを孕ませるためのそれは、真山を桐野の匂いに染め、身体を作り替えるために注がれていた。
放たれる熱い白濁を受け止めるたびに真山は甘く啼き、身体を震わせた。
そんな真山に、桐野は強く優しく絶え間ない快感を与える。暴力的で溺れそうな快感に浸され、真山は頭の芯まで恍惚に染められた。
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