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44:最初から
頭ん中全部お前のことしか考えられなくなるくらい好きだ。奥の奥に出されて満たされたら幸せを感じる。何度も穿たれて注がれる度に存在感が増して消えなくなる。体を全部明け渡してどろどろになるまで犯されて、言ってることも考えてることもおかしくなってしまった。
求められる度にマキの名前を何回も呼んで好きだと叫んで、何度でもいった。
ローションだか精液だか滲み出してきた体液だか分からないものが、ゆるゆる抽挿される度に外に垂れ落ちて、体温もあらゆる感覚も体も全部一体になったみたいだった。正常位でぎゅうぎゅう抱きしめてキスをしながら最後の一適を絞り出したマキが、ずるっと抜け出る。
「はあ……はあ……」
疲れ果てて息をするマキに体重をかけられた。重みが気持ちいい。
「あ~…………このまま寝てぇ」
「……寝るな。中に出したもの、掻き出さねぇと」
本当にそのまま寝落ちしそうなマキを掠れた声で阻止した。ようやく訪れた終わりに頭が冷える。
俺だって本当はもう寝てしまいたい。だからセックスにはゴムが必要なんだ。散々出された中が夢のようだった情事から現実に戻す。
「はあ、風呂……」
汗やお互いが出したもので2人とも腹から下がべとべとに濡れてる。何より俺は尻穴がたぷたぷでずっと中が生ぬるい。このまま寝返りを打つたびに穴からしたたらせて寝るなんて出来ない。今から起き上がって風呂に行って後処理をするかと思うと憂鬱だった。男は現金だ、さっきまで幸せ以外何も感じなかったのに、出すもの出したらすぐこれだ。
「一緒に入ろう」
上体だけは何とか起き上がらせて、倦怠感で動き出せない俺にマキが笑いかけた。風呂に行こうと言う。
「……もうやらねぇぞ」
「俺ももう出ねーよ。風呂まで連れて行ってあげようか?」
「いい、行ける……」
根性で立ち上がった。膝が震えそうになるのを押さえつけて歩くと、尻からまた一筋垂れた。ゆっくり歩く俺の後ろをマキが手を貸さずついてきた。本当に一緒に入るつもりか?
「ケツ洗うとこ見るなよ」
「じゃあそのときになったら先あがる」
浴室に入る俺の後に、上機嫌で続く。何かまたプレイを強請られるんじゃないかと思ったら、「背中洗ったげる」と体を気遣われた。
体と髪を交互に洗い、「洗顔なに使ってんの?」だの「これすげぇいい匂い」だの、マキはさっきまでセックスしてたときと同じ全裸で気さくに話をした。色っぽいやりとりなんて何もない。体が触れ合っても「狭いよ、邪魔邪魔」とわざと冗談で邪険にする。いざ俺が尻を洗う段階に入ると、体を流して本当に先に出て行った。
そんなたった10分程度のやりとりで、セックスのあとの嫌な気分が全部吹っ飛んだ。
ケツの後処理なんて自己嫌悪がつきまとう行為も、淡々とこなしてしまった。風呂から上がって、スマホをいじって俺を待ってたマキを見てると、愛しさがこみ上げる。
「好きだ」
良かった。
今日マキが俺を追いかけてくれて。
俺を好きになってくれて。
全部の情が溢れ出て改めて告白するとマキはスマホから目線を上げて、俺を見た。整った顔が破顔する。
「知ってる」
初めて言葉を交わしたときからずっと好きだった。ようやく分かった。俺がやっと気付いたことを「ぜっとさん、ずっとバレバレだったよ」と俺の彼氏になった推し配信者が笑って指摘した。
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