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第66話
「こ、声が欲しいです……」
「声?」
「あ、あの、ボイスメッセージ……保存しなかったから消えちゃって……も、もう一回送ってくれませんか? おやすみなさいって……」
モジモジしながらお願いすると、諒大はみるみる笑顔になる。
「颯さんって、本当に可愛いですね」
諒大は颯の腰を抱き、自分のほうへと引き寄せた。
「颯さんが声を聞きたくなったら、いつでも俺に電話してくださいね。毎晩寝る前におやすみなさいって言ってあげたいと思ってますが、颯さんのおねだりだから、今からボイスメッセージ、送りますね」
諒大はスマホを操作して、マイク部分を自分の口に近づけた。
「おやすみなさい、颯さん。愛してます。大好き」
ピロンと颯のスマホが鳴り、そこには諒大からのボイスメッセージが送られている。
再生してみると、さっき諒大が言ってくれた言葉がそのままメッセージに詰まっていた。
「うわぁ……!」
(諒大さんの、愛してると、大好きが入ってる……!)
思わず頬が緩む。
失くしてしまった颯の宝物が返ってきた。しかも言葉がグレードアップして。
「ありがとうございます、諒大さん! ずっと、ずっと大切にします」
スマホを握りしめて諒大にお礼を言うと、諒大にガバッと急に抱きしめられる。
「ど、どしたの、諒大さん……?」
「もう、可愛いくて……大好き、颯さんっ!」
「えっ、えっ? うわぁっ!」
軽々とベッドに押し倒され、諒大はチュッチュとついばむようなキスを何度も繰り返す。なんだか大型犬に飛びつかれてペロペロ顔を舐められている気分だ。
「あっ、こらっ、諒大さんったら! あはっ、あははっ……!」
首筋を舐められ、くすぐったくて颯は身をよじる。
「だって可愛い。最高に好きです。今すぐ抱いていいですか?」
キラキラと期待に満ちたダークブラウンの瞳で見つめられ、颯は「ゔっ……」とたじろぐ。
諒大に迫られると弱い。昨晩、散々したし、今は昼間なのにと思うけど拒めない。
「さ、三回までなら……」
視線を外し、恥ずかしながら諒大に伝える。諒大とのエッチは気持ちがいいし、諒大とならずっと繋がっていたいけど、たくさんは無理だ。一回じゃ収まらないだろうけど、回数を決めておかないと、昨晩みたいにめちゃくちゃに抱き潰されてしまうかもしれない。
「ちょ……っと、待って……!」
諒大に吹き出して笑われる。
(えっ……? おかしい……?)
颯はどうして笑われたのかわからない。コミュニケーションのやり方を間違えてしまったのだろうか。
「ごめんなさい、予想外でした。一回だけでもと思ってましたが、アルファの俺に対する寛大な配慮、ありがとうございます。颯さん、きっちり三回、させてもらいます」
「ハイリョ……? あっ……」
Tシャツの下、諒大の手が颯の脇腹に触れてくる。それだけで颯の身体がビクッと震えた。
「よかった。俺、颯さんといっぱいしたいと思ってたんですが、俺、アルファだし我慢しなきゃなって思ってたんです。颯さんがたくさん受け止めてくれるの、すごく嬉しいです……」
アルファは体力と精力が桁違いにすごいと言われている。諒大に我慢はしてほしくないと思うが、この身体で全部受け止めきれるのかちょっと不安だ。頑張りすぎず、時々はセーブしてもらいたい。
「俺の服を着てる颯さん、この上なく可愛いです」
「あっ、あっ、諒大さん……っ!」
「ハーフパンツの下は何も履いてないの? エッチだな……」
「あっ、触って確かめなくても……っ!」
結局そのあと諒大ときっちり三度、交わることになり、疲れ切った颯は夕食の時間まで諒大のベッドでぐっすり寝るハメになった。
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