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番外編

「颯さんは俺のこと、好きですか? 嫌いですか?」 「はっ……?」  諒大はなんということを聞いてくるのだ。そんな質問に、素直に答えられるわけがない。 「いやっ、あの、そのー……それはですね……」  颯が返答に困っていると、諒大が笑う。 「こんな質問、普通答えようとしないですよ。まったくいつも一生懸命なんだな、颯さんは」 「えっ、そうなの……?」  聞かれたら答えるものだと思っていた。世の中の人たちはどうしてあんなにスラスラと人とコミュニケーションを交わせるのだろう。カフェのお客さんたちを見てすごいなと尊敬する。言語のコミュニケーションは会話の連続だ。颯は一個一個の会話でいっぱいいっぱいなのに、それを易々と楽しそうに繰り広げられる才能が羨ましく思う。 「冗談ですから答えなくていいですよ。それに、颯さん見てたらなんとなくわかった気がします」 「え!」 (ウソ! 諒大さんに僕の気持ちが、バレた……!?)  颯は慌てる。バレたらどうしよう、バレたらどうしようとそのことばかりが頭をぐるぐる巡っている。 「颯さん。写真も撮ったし、食べましょうか。すごくおいしそうですよ?」  諒大はハンバーガーに手をつけた。するとハンバーガーに寄りかかっていたクマちゃんカステラがコロンと倒れて、颯クマが諒大クマにのしかかり、皿の上に押し倒すような格好になった。 「あっ、諒大さん、倒しちゃってごめんなさいっ」  颯が並べ直そうとすると、諒大の手が伸びてきた。諒大は二匹のクマを向かい合わせにして、抱きしめ合いながらチューをしているような格好にする。  正確には、鼻と鼻がぶつかっているのだが。 「め、めっちゃ仲良し……」 「はい。めっちゃ仲良しです。いただきますっ」  諒大は器用にハンバーガーにかぶりつき、 「うまっ。肉がジューシーで。味もいいですね」と御曹司らしからぬ男らしい食べっぷりだ。  颯もそれにならって遠慮なく食べる。  たしかにすごくおいしい。散歩してお腹が空いていたのもあるし、なんでだろう。諒大と一緒に食べると何倍もおいしく感じる。  クマちゃんたちは相変わらず仲良しのまま。鼻と鼻をコツンして可愛らしい。 (いいなぁ……)  諒大クマにぴったりとくっつく颯クマが羨ましくて仕方がない。 (目の前に、いるのに……)  バンバーガーにかぶりつきつつ、チラッと諒大を見ると、諒大は「小動物がもりもりご飯食べてるみたいですね」と笑う。 「昔から、食い意地は張ってるんです。いっぱいご飯を食べても大きくならなかったんですよ。給食だっていつもお代わりしたのに」   小動物なんて言われてムッとして諒大に言い返すと、諒大に「お代わりですか、本当可愛いです」とニコニコされた。  はぁ、もう、これだからアルファは嫌だ。男らしくなれないオメガの苦しみを何も知らないで。 「守ってあげたくなります」  諒大は微笑む。その破壊力抜群の笑顔にドキッとして、颯はハンバーガーを落っことしそうになる。 「い、いやそんなっ、今までもひとりだったんだから、これからもひとりで大丈夫ですからっ」  訳のわからない言い訳をして、颯は食べることに集中しているふりをする。  諒大に、このドキドキと真っ赤な顔を悟られたくなかった。

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