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番外編

 目的の体験型ミュージアムに着き、颯とふたりで壁面いっぱいに映し出される光のアートを眺める。 「諒大さんっ、こっち。ちょうちょ、蝶がいますよ!」  腕を引っぱられ、小部屋に連れて行かれる。そこには羽ばたく色鮮やかな蝶のグラフィックが何百、何千と動いていて、とても幻想的だ。 「触ると散り散りになります!」  颯が壁面に映る蝶に触れると蝶が方向を変える。それが面白いようで、颯は壁を何度も指でちょんちょんして遊んでいる。 (可愛い)  無邪気にはしゃいでる颯を見て、可愛くて仕方がない。 「綺麗ですね、諒大さん」  にっこり微笑みかけてくる颯を見て、「綺麗なのは颯さんです」とやばいセリフを言いかけてやめる。  言いたい。あの横顔にキスしたい。でもあまりガツガツするのは大人の男らしくない。 「ええ。綺麗ですね」  颯の隣に並んで光のアートを眺める。  この小部屋に誰もいないことをいいことに、颯の腰に腕を回して抱き寄せたい。ごくごく自然に颯に手が伸びるが、それを寸前で止める。 (触るな。耐えろ、俺!)  目指すは大人の余裕のある男だ。紳士がベタベタ触ったりはしない。  気持ちを整えようと深呼吸をしていたら、颯に「諒大さん、どうしたの?」と不思議がられてしまった。  それから次々と趣向を凝らした音と光のアートを楽しむ。颯の写真ばかり撮っていたら「諒大さんも撮りましょう」と言われて、ふたりで肩を寄せ合い自撮り。 「写真、見たいです」 「いいですよ」  諒大は颯に自分のスマホを手渡す。  撮った写真を眺めながら、颯は「諒大さんかっこいい……」と呟いた。  そんなことを言われたらたまらない。嬉しくて、気持ちがついつい大きくなる。 「颯さん。そんなに俺のことが好きなの?」  スマホの画面を見つめている颯に声をかける。颯の手には、諒大の顔を拡大した写真が画面いっぱいに映っているスマホだ。 「えっ、あっ、これは……」 「自分の写りを確認したいのかと思ってました」 「そ、れもそうなんだけど、なんか、引き寄せられるみたいに諒大さんを見たくなって……」 「なんですかその可愛いすぎる理由は」  抱きしめたくなって両腕を伸ばすが、すぐさま引っ込める。 (颯さんには触らない!)  いつもの自分だったら、ここまでに何度ベタベタしていることだろう。 (頻度がやばいだろ。身体目的じゃないってことをはっきり見せつけるんだ)  ここは我慢だ。アルファの欲望をオメガに押し付けてはいけない。  颯が嫌がることはしたくない。 「諒大、さん……?」  上目遣いにじっと見つめられて、あまりの天使具合にドキドキする。  我慢しなきゃいけないのに、この誘惑はやばい。  今すぐ抱きしめたい。あの小さくて柔らかい身体をこの腕にぎゅっと閉じ込めたい。 (えっ?)  ほんの少しだが、颯が諒大の服に触れる距離まで歩み寄ってくる。  颯の髪の甘い匂いがふわっと鼻腔を通り抜けていく。その香りに決心がぐらつく。 (我慢だ、我慢っ)  こんなに近くにいるのに、触れられないなんて。一秒だけでもいいからぎゅーしたい。この手で颯を感じたい。 「颯さん、今度はあちら側を見てみましょうか」  諒大はサッと身体を離して、次のエリアに向かって歩く。 (あっぶな)  颯が可愛すぎる。あれ以上接触していたら、全身全霊で抱きしめてしまうところだった。

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