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番外編4『巻き戻りのオメガは年下彼氏を甘やかしたい』
諒大との婚約を発表してから早一ヶ月が過ぎた。諒大との仲はとても良好で、仕事も順調、毎日心穏やかに暮らせている。
今は、皿洗いの仕事を終えて従業員のロッカールームで帰り支度をしているところだ。仕事の間、ロッカーに閉じ込めていたスマホを取り出して、SNSをチェックする。
(今日もお誘いなし、か……)
婚約してから、かなりの頻度で諒大から『今日、俺の家に来ませんか』とか『仕事のあと一緒に食事しませんか』とお誘いメッセージが飛んできていた。
それが、ここ一週間、まるでお誘いがない。
「忙しいのかな」
社内の噂話で、大きなプロジェクトチームが発足されたと聞いた。そのチームリーダーが諒大なのだ。
ただでさえ企画部の仕事に追われていて、社長の息子としての責務もある。そこにきてプロジェクトリーダーを担うなんて、心配になるくらいの仕事量だ。
これでは颯を食事に誘ったり、迎えに来ている場合ではないだろう。
「会いたいな……」
諒大は今、どこで何をしているのだろう。食事はきちんと食べているのだろうか。睡眠は……あまり眠る時間はないかもしれない。
「会いに行っちゃえばいいんじゃないですか」
「わあぁっ!」
突然、背中を押されて、颯はビクッと身体を震わせる。振り返るとそこには同僚の岸屋がしてやったりの顔をして笑っていた。
「もう、岸屋くん、普通に話しかけてよ……」
「だって室長の写真見ながら『会いたいな……』って言ってるんですよ。それならどーんっと背中を押したくなるじゃないですか」
「だからってリアルに背中押す人初めてだよ」
岸屋はいつもこんな調子だ。
「急に家に行ったりしたら迷惑だよね」
合鍵は持っている。諒大は「いつでも来てください」というけれど、申し訳なくて勝手に使ったことは一度もない。
「大丈夫でしょ。室長にやましいことがないなら、いつ恋人が家に来たって」
「やましいこと、諒大さんがしてるのっ?」
「してない、してない。室長なら大丈夫でしょっていう話ですって」
「うん……」
諒大に限って、浮気なんかしないと信じている。でも、なんだろう。想像したら急に不安になってきた。
颯にはいいところがひとつもない。いまだにどうしてあんないい人が、自分のことを選んでくれたのかわからない。
(今まで逃げてばかりで失敗したんだ。今度こそ頑張らなくちゃ。積極的にならなきゃ)
迷っているのならやってみよう。
誘われるのを待ってるばかりじゃダメだ。諒大に会いたいなら、自分から動き出せばいい。
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