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第12話
「ふっふっふっふっ!」
「へっへっへっへっ!」
「「あっはっはっはっ!!」」
「あの、不気味だからその笑い方やめない?」
昼休み、いつもの空き教室に集まった俺達。
俺はいつものように弁当を広げ、安達と瀧藤のお馬鹿二人組は、一枚の紙を手に不敵に笑いあっている。
そう。ついに今日、期末テストの総合順位が発表されたのだ。
テスト最終日から今日までの三日間。いつにも増してぶつかり合う二人に俺の疲れも限界寸前。そんな俺にとっても有難いこの日、二人のテンションは最高潮に達している。
「今、素直に負けを認めたら、月に一回くれてやっても良いぜ?」
「先輩こそ!月に一回のチャンスが欲しいなら、今しかないですよ?」
「ドヤ顔やめて!俺が恥ずかしいから。」
そんなに欲しけりゃ作ってもらうよ、出汁巻のひとつやふたつ!!
俺の気持ちなんて完全無視。相手の挑発に乗り合った二人はギラついた視線でお互いを睨むと、バァンと成績表を机に叩き付ける。
「292位だ!」
「おぉ~凄いな!お前やればできる奴だったのか!」
「もっと褒めてもいいんだぞ!!!」
鼻息荒く詰め寄って来る瀧藤の頭をガッシガッシ撫でてやる。
うんうん、偉い偉い。
大型犬のじゃれ合いに付き合っていると、普段なら必ず飛んでくる文句が聞こえてこないことに気づいた。
見ると、安達は頭を垂れじっと動かない。それを見た瀧藤が、ニヤついた笑顔でここぞとばかりに煽り始める。
「どうした、安達。俺は優しいから、自分から白状すれば月に一回出汁巻をやってもいいんだぞ?俺は、優しいからな!」
「こら、大人げないこと言うな。……安達?出汁巻ならお前の分も作ってもらうから。」
「はぁ!?それじゃあ何のために勉強したかわかんないだろ!」
「いや、成績のためだよ。」
ふざけたことを抜かす大型犬にステイを命じ、固まったままの安達に近づいていく。
「………安達、大丈夫か?」
声をかけると、俺に見られたくないのか片手で顔を覆う安達。
まさか、泣き出すとは思わなかった。我が家の出汁巻にここまで本気になる男子高校生がいただなんて。
余程悔しいのか、段々体が震え、声まで聞こえ……って、笑ってる・・・?
「何を勝手に決着つけてるんですか、瀧藤先輩。」
「………あ、の、安達?」
「漣先輩、心配ご無用ですよ。この僕が漣先輩の出汁巻を逃すわけないじゃないですか。」
空気は一転。青ざめた瀧藤がギギギギギっと首を動かし、堂々とした安達はゆったり視線を合わせにいく。
一瞬の沈黙の後、それはそれは美しく笑んだ安達は告げる。
「僕は、274位。18位分俺の勝ちですね。」
試合終了のチャイムが鳴った。
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