47 / 99

第4話

「それで、どう?俺は良い案だと思うんだけど。」 花を飛ばす安達と、渋い表情の瀧藤。 「大賛成です!」 「ぐぅ~~~~~~。」 「反対するなら、もっと良い意見下さいね!」 「ぬぅ~~~~~~~~~!!」 ぐいぐい煽る安達に暫く唸っていたものの、代案は思いつかなかったようだ。項垂れた瀧藤が渋々了承した。 それを見て嬉々とした安達が、自分と俺の分のトレーを片づけ始める。 「そうと決まれば服を取りに、僕の家に行きましょう!」 「今から行くの?」 「まだ2時前ですし、早い方がいいでしょ!」 腕を引っ張られ、慌てて鞄を掴む。 安達は顔だけ振り返り瀧藤に叫んだ。 「瀧藤先輩は来ないで下さいね!」 「はぁ!?密室で二人きりなんて許すわけねーだろ!」 「やだー、先輩のエッチ!何考えてるんですかぁ~!」 「待てコラ!ボコボコにしてやる!!」 店を出れば12月後半の寒い風が全身に吹きつけるし、二人はいつものように俺を挟んで口論に勤しんでいる。 寒いのも騒がしいのもあんまり好きじゃない。 けどまぁ今は悪くないかな。 駅に向かって歩く道中、ほんの少し上がった口角を隠すように、俺はマフラーに首を埋めた。 ――――――― ―――― ― 「先輩と初めての改札。」 「先輩と初めてのホーム。」 「先輩と初めての電車!」 「今日は初めてのことが一杯ですね!!!」 「単位が細かすぎると思うの俺だけ?」 「いや、俺も細かいと思う。てか、キモイ。」 「瀧藤先輩に貶されても全然大丈夫です。今の僕はベリーハッピーなので!」 「でもちょっと緊張します。」 「なにが?」 「先輩をウチに呼ぶことですよ。」 「え、なんで?」 「好きな人をウチに呼ぶんですよ~。緊張します、やっぱり。」 「部屋が汚いとか?」 「いや、そういう事じゃないだろ。」 「え、じゃあ何で緊張するわけ。」 「……………。」 「?まぁいっか。」 「先輩、先輩、先輩、先輩!」 「一回で聞こえるぞ~。」 「連絡先、交換しましょ!」 「あれ、してなかったっけ。」 「安達なら真っ先に言いそうなのになー。」 「してないですよ!瀧藤先輩が怖かったから言い出せなかったんですぅ~。」 「お?喧嘩か?買うぞ?」 「電車内ではお静かに願いますよ。」 「ふぉぉぉぉぉぉ!僕の電話帳に、先輩の名前がっ!!」 「そんなに喜ぶものかな。」 「そんなに喜ぶもんですよー!なんてったって好きな人のですからね~!!」 「ただの連絡先だよ?あんなに喜ぶものなの?」 「…………ちょっとだけ安達に同情するわ。」 「マジか。こんなに喜ぶものなんだ。」 「安達。先に言っとくけど、返信来なくても泣くなよ。」 「………え?」 「一週間来ないとか、ザラだから。」 「え!!?」 「あの~先輩。SNSとかってしてますか?」 「めんどくさいから絶対やらない。」 「こいつLI○Eの友達でさえ20人くらいだから。」 「……良いんです。その中に入れただけで、僕は嬉しいですから!」 安達家まで、あとちょっと。

ともだちにシェアしよう!