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第4話
「それで、どう?俺は良い案だと思うんだけど。」
花を飛ばす安達と、渋い表情の瀧藤。
「大賛成です!」
「ぐぅ~~~~~~。」
「反対するなら、もっと良い意見下さいね!」
「ぬぅ~~~~~~~~~!!」
ぐいぐい煽る安達に暫く唸っていたものの、代案は思いつかなかったようだ。項垂れた瀧藤が渋々了承した。
それを見て嬉々とした安達が、自分と俺の分のトレーを片づけ始める。
「そうと決まれば服を取りに、僕の家に行きましょう!」
「今から行くの?」
「まだ2時前ですし、早い方がいいでしょ!」
腕を引っ張られ、慌てて鞄を掴む。
安達は顔だけ振り返り瀧藤に叫んだ。
「瀧藤先輩は来ないで下さいね!」
「はぁ!?密室で二人きりなんて許すわけねーだろ!」
「やだー、先輩のエッチ!何考えてるんですかぁ~!」
「待てコラ!ボコボコにしてやる!!」
店を出れば12月後半の寒い風が全身に吹きつけるし、二人はいつものように俺を挟んで口論に勤しんでいる。
寒いのも騒がしいのもあんまり好きじゃない。
けどまぁ今は悪くないかな。
駅に向かって歩く道中、ほんの少し上がった口角を隠すように、俺はマフラーに首を埋めた。
―――――――
――――
―
「先輩と初めての改札。」
「先輩と初めてのホーム。」
「先輩と初めての電車!」
「今日は初めてのことが一杯ですね!!!」
「単位が細かすぎると思うの俺だけ?」
「いや、俺も細かいと思う。てか、キモイ。」
「瀧藤先輩に貶されても全然大丈夫です。今の僕はベリーハッピーなので!」
「でもちょっと緊張します。」
「なにが?」
「先輩をウチに呼ぶことですよ。」
「え、なんで?」
「好きな人をウチに呼ぶんですよ~。緊張します、やっぱり。」
「部屋が汚いとか?」
「いや、そういう事じゃないだろ。」
「え、じゃあ何で緊張するわけ。」
「……………。」
「?まぁいっか。」
「先輩、先輩、先輩、先輩!」
「一回で聞こえるぞ~。」
「連絡先、交換しましょ!」
「あれ、してなかったっけ。」
「安達なら真っ先に言いそうなのになー。」
「してないですよ!瀧藤先輩が怖かったから言い出せなかったんですぅ~。」
「お?喧嘩か?買うぞ?」
「電車内ではお静かに願いますよ。」
「ふぉぉぉぉぉぉ!僕の電話帳に、先輩の名前がっ!!」
「そんなに喜ぶものかな。」
「そんなに喜ぶもんですよー!なんてったって好きな人のですからね~!!」
「ただの連絡先だよ?あんなに喜ぶものなの?」
「…………ちょっとだけ安達に同情するわ。」
「マジか。こんなに喜ぶものなんだ。」
「安達。先に言っとくけど、返信来なくても泣くなよ。」
「………え?」
「一週間来ないとか、ザラだから。」
「え!!?」
「あの~先輩。SNSとかってしてますか?」
「めんどくさいから絶対やらない。」
「こいつLI○Eの友達でさえ20人くらいだから。」
「……良いんです。その中に入れただけで、僕は嬉しいですから!」
安達家まで、あとちょっと。
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