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第13話

それからが地獄だった。 基本的に言葉数が少ない先輩は、僕の噂を聞いても、来栖さん達としてる僕を見ても、何にも言わなかった。 面倒だから首を突っ込まないようにしているのか。 僕なんかどうでもいいから気にならないのか。 本当は心の中で罵りながら抱きしめてるのかも。 不安で余計に人肌が恋しくなって、セックスして自己嫌悪が止まらなくなって不安になる、その繰り返し。 完全に悪循環に陥ってるのは分かっていたけど、自分から聞くことは出来ないし、先輩にバレないよう我慢するしかなかった。 最中に先輩を思い浮かべては自分を嫌い、先輩の腕の中でこっそり唇を噛み締める。 そんな僕の恋心を、醜く穢れた僕が嘲笑う。 でも先輩は一度たりとも僕を遠ざけようとしなかったから、諦めるなんて出来なかった。 だから先輩の反応を自分に都合よく解釈した。 依存症を個性の一つとして認めてくれているんだ、と。 僕はボロボロの自分を隠して先輩に笑いかけるようになった。 それも長くは持たなかった。 先輩といればいる程むくむくと欲が膨らんできたんだ。 先輩と同じものを食べたい。先輩と一緒に勉強したい。先輩の一番になりたい。 ちょっと視線が外れるだけで許せなかったり、我がままを言ってみたり。 付き合っても無い癖にって独りになったら後悔するのに、その時は欲望を抑え込むことが出来ない。 でも先輩は怒らない。 自分でもウザいと思う事でもちょっと呆れた顔をするくらいで、頭を撫でてくれる。 だから余計にボーダーラインが分からなくなって、気が付いたら先輩の胡坐の中が定位置になっていた。 嬉しかった。 僕はここまで踏み込んでいいんだって。 辛かった。 先輩はこの距離にドキドキしないんだって。 先輩との距離が縮まっていく度に、受け取り方の違いに心が悲鳴を上げそうになる。 それでも先輩の隣にいられるなら、僕は笑って抱き枕を演じていた。 だから、涙を拭われた時は心臓が止まるかと思った。 独りになるのが嫌だ。帰ってほしくない。そう思った僕の心を見透かしたみたいに泊まらせてって言ってくれた。 僕を悲しませたくないと思ってくれたんだ。 舞い上がった。心に羽が生えたようだった。 先輩に声をかける前みたいに毎日がカラフルになった。 僕の作り上げた妄想は案外真実だったのかもしれないなんて、あんなに怖がっていたのが嘘みたいに先輩を信じることが出来た。 でもやっぱり、僕の勘違いなのかもしれない。 誰にでも喜んで股を開く、そんな僕を嫌いにならないはずが無い。 僕は来栖先輩の言葉が脳内から消え去るように急いで妄想を語った。

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