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第14話

いつもの空き教室に安達と二人。 「安達、こっちおいでよ。」 「っひ、やですっ、うぅ~。」 「…………これ、どうすればいいんだ。」 俺は毛布に包まった安達と必死に戦っていた。 先輩達に言いたいだけ言った安達は話があると俺をここまで引っ張ってきたものの、着いた途端毛布を被って泣き始めてしまった。 何が何だか分からないけれど取り合えず落ち着かせようと、安達に近づくと、 「触らないでください。」 と更に泣きだす始末。 安達に触らないでと言われるのは初めてで、戸惑いながらも距離を置いて座る。 そしてどうにかこうにか泣き止むように話しかけたのだが、万策尽きてしまって今に至る。 どうにもならない状況につい溜息を吐いてしまいそうになっていると、毛布の塊からすぽっと顔が出てきた。 擦ったからか目元が赤く腫れてしまっている。 「……安達?――――――――ほら、おいで。」 警戒心の高い猫の様にじっとこっちを見つめたまま動かない安達は、不謹慎だけどちょっと可愛い。 そっと手を出して伺っていると、恐々としながらも安達が話しだした。 「先輩。僕のこと嫌いですか。」 「嫌いじゃないよ。」 即答した俺に、赤い目がパチリと瞬いた。 素直に驚きを表す安達に微笑むと、また頭まで毛布を被ってしまう。 「来栖さんとの話ちゃんと聞いてました?僕、本当にビッチなんですよ。」 「聞いてたよ。」 ついさっき来栖達に堂々と言い返していた時も思っていたけど、やっぱり虚勢を張っていたんだな。 安達は自分が世間一般的に嫌われるタイプだって分かっているから、俺が離れていかないか不安でたまらないんだ。 「ていうか、自分で言ってたじゃん。俺は個性の一つとしか思ってないって」 「先輩、僕のそういう話に触れないじゃないですか。だからどう思ってるとか分かりません。全部僕が都合よく創りだしたお話です!」 自棄気味に叫んだ安達が、ぐしゃぐしゃの泣き声で訴えかけてくる。 俺は安達にそっと近づいて抱きしめた。 「確かに俺は安達がそういう人だって聞いても、来栖先輩の時も何にも言わなかった。でも、何にも思ってないものを何て言えばいいのかわからなかっただけ。」 「どうせ僕が汚れてようが先輩は気にならないんでしょう。」 間髪入れず帰ってきた声に、言い方が悪かったかと苦笑する。 違うと言ってもこのままでは信じてくれないだろうと、毛布を剥ぐ。 「安達が汚いなんて思ったことないよ。セックスのことだって何か訳があるんだろうなって、でも聞かれたく無いことだったら聞きたくないなって思ってただけ。」 もし良かったら、教えて。 暫く逡巡した安達は遠慮がちに俺の制服を摘むと、ゆっくりと話しだした。

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