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第15話

「僕、親がいないんです。生まれた時から施設で暮らしてたんで、家族っていうのがちょっと分からないんです。」 「施設には他の子もいたんじゃないの?」 「いましたけどみんな仲良くっていう感じではないですよ。僕は不器用だから余計に輪に入れなかったんですけど。」 ぼーっと窓の向こうを見つめている安達は、またあの仄暗い目をしている。 涙が流れていないから余計に怖いけど、なんとなくこの表情が安達を守っている気がしたから、俺はそっと頭を撫でた。 「それで独りが苦手になったのか。」 「知ってたんですか、苦手なの。」 キョトンとこっちを振り向く安達に頷くと、ふいっと顔を背けられた。 何で耳が赤く染まっているのか気になるけれど続きを促す。 「中学に上がったぐらいの時に、何か全部どうでもよくなって、誘われるがままに着いて行った夜の街で初めて男と寝ました。」 「初体験が男の人?」 「そうです。その日、何にもできない僕に唯一合った才能が、ネコとして気持ちよくなれる事だって気づいたんです。」 そう言って安達は心の底から嬉しそうに笑った。 「一人は嫌だから誰かと一緒にいたい。でも僕は頭が良いわけでも、運動が出来るわけでもないから、いつも独り。それが、セックスするだけでみんな寄ってきてくれるんです!」 お気に入りのオモチャを自慢する子供の様な安達は、次の瞬間自嘲気味な笑顔に変わる。 「始めは手段だったんです。でもそのうちセックスしないと不安になって、気付いたら誰とでも寝れるようになってた。それが僕です。」 床の木目をじっと見つめている安達の表情はもう見えない。 けれど俺には一つたりとも反応を逃すまいと、全身を耳にしているように感じた。 だから俺もなるべくストレートに届くように願って声をかける。 「いいんじゃない?そんな安達がいても。」 だって寝るのが死より怖い人間もいるんだから。 安達がゆっくりとこちらを見る。 それでもまだ、所在なさげに揺れる視線が可愛くて悲しくて、頭を撫でる。 「それに俺が知ってる安達の良いところはそれだけじゃないよ。」 「………?」 「例えば、意外と真面目。抱き枕の契約だってただの口約束なんだから破ったって構わないのに、絶対破らなかったじゃん。」 「それは!先輩との約束だから、」 「男子高校生が住んでるとはとは思えないぐらい、部屋が綺麗だってのは瀧藤も褒めてた。」 「――――っ!!」 「他にもまだ一杯良いところあるけど、聞く?」 「いいです!もう充分です!!!」 真っ赤になった安達が、恥ずかしい耐えられないと暴れるのが面白くて、少し笑ってしまった。

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