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第12話
沢山泣いたらちょっとだけスッキリした。
そうだ、僕はまだ先輩に好きって言ってない。まだスタートラインに立ってすらいないんだ。
断られることを前提とした告白はやっぱり辛くて、視界が揺れ始める。
でも絶対、泣き落としとかしたくないから軽く頬を叩いて涙を止めようとした。
ちゃんと、先輩に告白しよう。
そして、ちゃんとフラれるんだ。
泣きすぎて腫れた目なんて不細工なんだろうけど、僕は精一杯強がって先輩をしっかりと見つめた。
「あのね、先輩。僕、僕先輩の事大好きなんです。」
「ん。」
「でも、先輩は僕のこと…。」
ぶわっと涙腺が刺激されて、気合にもう一発両頬を叩く。
「僕のこと、好きじゃ、ないんでしょう?」
嫌だ。答えないで。聞きたくない。嫌だ。答えないで。聞きたくない。嫌だ。答えないで。聞きたくない。嫌だ。聞きたくない。答えないで。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
負の感情が溢れ出してきて、固まったはずの意思が揺らいでしまいそうになる。
それでも、僕は、目を逸らしたくないんだ。
視線の先で先輩の口が開いた。
「うん。」
ほら、やっぱり。
大好きな大好きな先輩の口から、一番聞きたくない言葉が出てきて顔が歪むのが分かる。
先輩はまだ続けようとしていて耳を塞ぎたくなったけれど、聞こえてきた言葉に悲しみも何もかも吹っ飛んでしまった。
「お前に対して、恋愛感情は一切持ってない。」
………ん?
恋愛感情”は”一切持ってない。
それって、他の感情は、持ってくれてる?????
基本的に他人に興味が無くて、自分の意見なんて殆どない先輩。
不眠のせいでいつ迷惑をかけるか分からないからって、人との関わりを極力減らそうとしている先輩。
そんな先輩が、僕に何らかの気持ちを抱いているって、ソレ……!
「っもう!先輩、大好き!!!」
僕は先輩に飛びついた。
「もう、一体どういうことなの!!」
混乱の末に叫んでいる先輩をぎゅうぎゅう抱き締める。
僕の考えは究極なポジティブ思考で、嫌なことから目を逸らしただけなのかもしれない。
自分が傷つかないように蓋をして、束の間の喜びに目が眩んだだけなのかもしれない。
けど、まぁ、いいよ!
先輩が流されやすい人だってことも分かってきたし、こうなったら押して押して押しまくりますよ!
「僕、あなたの抱き枕になります!」
常識とか、倫理観とか、僕には全く関係ない。
そんなに綺麗な人間じゃないし、そんなことより先輩の傍にいられることの方が遥かに大事だ。
こうして僕は先輩の抱き枕になった。
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