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第11話
「ふふっ、んふふふふっ!」
遂に!遂に漣先輩とセックスできた!!!
狭い1Kの部屋に抑えきれない喜びの声が満ちる。
想像していた何倍も色っぽかった先輩の表情に、幸せの溜息が漏れる。
快感に歪んでいく目元も、男らしく節がついた指先も、そそり立った男根も、全部に興奮した。
先輩は、多分覚えてないけど。
目を覚ました先輩は僕を不思議そうに見ていた。差し伸べた手を取ってくれたことに赤面した僕にも首を傾けていた。
きっと先輩に僕の気持ちは伝わってない。今のままじゃ先輩の中の僕はニ、三日経つと消えてしまう。
廊下を進んでいく先輩の背中が蘇る。
満ちていた筈の空間が急に閑散としていく。
いつもの寂しさが襲ってきて、ドス黒い感情が心の中を踏み荒らされる。
「…………つかまえなきゃ。」
僕から離れていかないように。
僕を置いて行かないように。
僕が独りぼっちにならないように。
そして翌日、僕はもう一度先輩を襲うことに決めた。
セックス。
それは僕にとって周りの人から求めてもらえる唯一の武器だから。
「5時間目始まるぞ。」
「えー!先輩行っちゃうんですか?」
「えー、授業受けに行く方が怒られるの?」
きっとどんなに眠くたって学校に通い続けている先輩は、普段仕方が無くサボっている分眠気がマシな時は授業を受けたいんだろう。
先輩の優先順位は、僕より授業の方が高いんだ。
でも離れてほしくなくて、どうにかして引き止めたくて、目一杯甘える。
先輩の邪魔はしたくないのに。
先輩の興味を引きたくて、必死にセックスについて語る。
僕の唯一の武器。
これしか、僕には無い。
でも、
「俺とお前って、付き合っては無いよな?」
そんなの何の自慢にもならない。
何年かぶりに涙が零れる。止めようにも次から次から流れ出てきて、子どものように泣くことしかできない。
僕の武器は先輩には効かない。
僕の穢れた身体じゃ先輩は振り向いてくれない。
初対面でいきなり伸し掛かって、付き合っても無いのにセックスしたいって言って。
抱き着いて泣きじゃくりたいけれどそんな資格は僕には無い。板挟みの感情に腕を彷徨わせ、小さく小さく先輩の服を摘まむ。
僕なんか、先輩の傍にいちゃ駄目なんだ。
それでも離れたくない僕は、どうしたらいいの?
ふと、頭を撫でられてる気がして顔を上げると、先輩が困った我が子を慰めるような顔をしている。
「うぅぅぅぅ!!!!」
「え、なんで更に泣くの?」
「せんぱいのばかぁぁぁぁ!!」
「え、なんで悪口?」
僕の涙は勢いを増した。
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