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第10話
それからは必死に学校へ通った。
今まで、部屋で一人でいるより教室で一人でいる方がマシという理由だったのが、想い人を探し出す為という理由に変わった。
どうでもいい授業をぼーっと聞き流しながら、あの日の寝顔を思い出してはニヤけるようになった。
誰にかに激しく揺さぶられながら、あの人がセックスするときの表情を妄想するようになった。
人生で初めての経験だった。
あの手この手で情報を集めて、あの人のことが分かってきた。
二年八組の漣 温人 先輩。
いつも人を睨んでいる。
話しかけても無視される。
偶に突然倒れるから心配。
感情の起伏が分かりづらくて怖い。
学校行事は大体参加しない。
よく授業をサボっている。
先輩についての話は9割ぐらいが悪口だったけれど、一つ気になる噂があった。
漣温人は、どんなに眠たくても自分から眠れないらしい。
僕はそれから先輩の行動パターンを観察した。
有難いことに僕の席は窓側で、2-8は丁度向かい側の校舎、しかも先輩の席も窓側だったからいつサボったのかは丸わかりだった。
先輩は三、四日に一回、学校を休むか授業をサボるかする。
多分、寝るのが苦手な先輩は四日に一回体が強制的に意識を奪っているんだと思う。
そしてその四日間は途轍もない睡眠欲に全身全霊で抵抗しているんだろう。
スマホで調べてみると、人は三日間徹夜するだけで記憶力が大幅に下がり、四、五日目には人格が破綻してくるようだ。
白昼夢を見たり、記憶障害が起きたり、人に対して疑い深くなったり、簡単な計算もできなくなる。
それが、先輩の日常なんだ。
だから目付きは鋭くなり、話しかけられても気づけない。些細なことに苛立ってしまうから、必要以上に平常心を保とうとしてる。
限界は突然来るから学校行事に出ると迷惑をかけると思っているのかもしれないし、授業をサボるのも意識が途切れる事を何となく分かっているからなんじゃないか?
きっとあの日もそうだったんだ。
道路の真ん中で倒れるより、路地裏で倒れる方が邪魔にならないと思ってあんなところで…。
あんな表情になるんだ、寝ている間も苦しいのかもしれない。
次に調べたのは、授業をサボった先輩がどこへ向かっているのか。
一度教室から消えたら、その日の授業は全部サボっている。
ということは保健室かと思ったが、養護教諭に聞いても知らないという。
まさか特別室で寝るとは思えないし、後は………
「屋上?」
そうして俺は漸く先輩と再会した。
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