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第9話
「僕が送ったメッセージも、返信もらえてないし。」
「え!」
慌ててトーク画面を開くと、安達から何件かメッセージが来ている。
やってしまった。
スピーカー機能を取り消し、スマホを耳に当てる。
「あ~~、ごめん。プッシュ通知切ってるから気づかなかった。」
一週間前に一回。五日前にもう一回。二日前に三回あって、昨日は四件。今日は五件もきてる。
五件のうち一件はさっきの電話だけど、本当に何度も連絡くれていたみたいだ。
「なんとなく、そんな感じかと思ってましたけどね。」
「…………ごめん。」
苦笑気味の声に、申し訳なさが溢れる。
これだけ溜めてこんでしまう自分にも流石に呆れしかない。
巷の高校生は一件未読するだけでも争いになるんだろ?
俺そんなグループに入ったら、一瞬でハブられるんだろうな。
「先輩、謝って済むなら警察は要りませんよ!」
「ん!?」
遠いところに飛んでしまった思考をいきなり引き戻される。
そうだけど。そうなんだけど!
この場合、詫びる以外にどうすれば良いんだ!?
突然の展開にテンパっていると、スマホから悪魔の様な笑い声が聞こえてきた。
「ふっふっふ!悪い子の先輩には、僕のお手伝いを命じます!」
「………おてつだい?」
安達、何考えてんのか、分からない。
珍しく俺に強気な安達。俺の頭上に疑問符が浮かぶ。
なんか、すごく追い込まれていることだけは分かる。
「これから僕が、質問していくので」
「うん。」
「ひとつ残らず、答えてください!」
「………質問に答えるだけ?」
「はい!」
警察まで持ち出しておいて要求がこれだけなのは、大分怪しい。
嫌な予感もするけれど、一応俺が悪いんだし付き合ってみることにする。
「まず、僕のお手伝いを確実に遂行するために、部屋で一人きりになってください。」
「あぁそれは大丈夫。もう部屋にいる。」
「流石先輩!いい子ですねぇ~。じゃあ、次いきますよ~!」
「はいはい。」
なんだか楽しそうなその声と裏腹に、俺は平静を取り戻してきた。
気分は、はしゃぐちびっ子を見守、保護者だ。
俺は乱雑にベットの上に座り、長くなりそうな話に備えた。
「先輩が好きな食べ物教えてください!」
「あ~~特にない。」
「嫌いなものは?」
「えー?腐ってたり不味いものは嫌い。」
「趣味ってありますか?読書とか、スポーツとか。」
「ナイナイ。」
「そうですよねー。想像つかないですもん。」
インタビューを受けてるよう。
少し擽ったいが、この程度でチャラにしてくれるなら願ったり叶ったりだ。
盛大に建設したフラグに気づかないまま、俺はしばしの雑談に花を咲かせたのであった。
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