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第10話
雲行きが怪しくなってきた。
質問に答え続けること5分ちょっと。段々とその内容が答えづらいものになってきている。
なんというか、所謂アダルトビデオの導入シーンの様な質問が繰りだされてきたのだ。
「今まで付き合あった人数を教えてください!」
「………ゼロ。」
「え~!先輩、モテそうなのに?」
「告白されたことはあるけど、好きでもない人と付き合うのは面倒だから。」
「じゃあ初体験は僕とですか!?」
「いや、中学の秋ぐらい、だったと思う。」
当時、学校の近所に住んでいた主婦に襲われたんだよなぁ。
登下校中、よくその家の前で限界がきて、見かねた奥さんが看病してくれたのが始まり。
ある日目が覚めたら、筆おろし真っ最中だったってわけ。
魔が差したとか何とか言われたけど、俺にその気は全くなかった。
むしろ修羅場に巻き込まれたら絶対に嫌だから、次の日から遠回りして学校に通っていた。
いい迷惑だよ。
「ふぅ~~ん。僕が初めてじゃないんだ。」
「お前が聞いてきたんだろ~。拗ねるな拗ねるな。」
「まぁ、初お付き合いは僕のものですから、良いですけどね!!?」
「………あぁ、うん。頑張って。」
鼻息荒く意気込んだ安達は、さらなる下心を曝け出してくる。
「というか先輩ってオナニーしますか?」
「うん!?」
「性欲、凄くなさそうに見えるんで、心配です!」
「…………月に2、3回くらいするよ。」
健康的な男子高校生がどれくらいの頻度なのかは知らないが、心配されるほど枯れてはいないと思う。
「あ、思ってたより多い!」
「お前の中の俺ってなんなの。」
「形のいいモノだってことは知ってるんですけどね!」
「………あぁ、うん。ありがと。」
とびっきりの笑顔が見える。
下世話でしょうもない話に疲れてくる。
けれど、やはりというか何というか、電話の向こうの熱気は上がってきたらしい。
安達の質問は更にエスカレートしていく。
「僕はあんまり好きじゃないんです、オナニー。だったらセックスしたい。」
「………あぁ、うん。だろうね。」
「先輩、セフレはいないんですか?ワンナイトの経験は?」
世の高校生ってそんなに進んでるの!?
絶句だよ。
まぁ無いですよね、なんて言ってる安達は、やっぱり性に奔放なんだろう。
俺はそんな事よりぐっすり寝たい派だから。
「じゃあ、オカズはなんですか?」
「あ~~、特に無いかな。」
「僕は勿論先輩です。」
「ワー、アリガトー。」
好きな相手を想像してするのは構わないけど、報告は要らないな。
棒読みの感謝を告げると、ふと、沈黙が生まれる。
「ねぇ先輩。」
「ん~?」
「最後にひとつだけ、質問いいですか?」
やけに切迫した声で尋ねる安達。
「今からオナニーするんで、聞いててもらってもいいですか?」
数分前の嫌な予感が、見事、的中した。
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