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俺と抱き枕の攻防戦
短くも長い冬休みが明け、3学期が始まった。
進級できるかギリギリの瀧藤は、昼休みも放課後も補修。脱走しては、般若顔の橘に追いかけられている。
だから、今学期に入ってから空き教室に集まるのは、俺と安達だけになっていた。
「いや~、ホント。先輩と連絡先交換してて良かったです。」
「ん?なんで?」
「だって先輩に教えてもらえなかったら、僕も宿題できなくて、橘の特別授業受ける羽目になってたんで。」
争う相手がいないから、俺の出汁巻を遠慮なく頬張る安達。コイツも中々問題児だから、橘の補修を受けたことがあるらしい。
「ていうか何で、数学の教師が歴史の補修するんですか!」
「上田先生が匙を投げたのを、橘が拾ってくれたんだろ。」
「そうですけど!そうですけど!!」
橘は怖いことで有名だが、どの科目の質問をしても答えが返ってくる多才さでも有名だ。
きっと意外と熱血な橘が、面倒を見てくれたんだろう。
まぁ、俺も橘の補修を受けたいとは微塵も思わないが。
窓から校門を覗くと、ぽつりぽつりと何人かの生徒が行き来している。
「………そっか、三年はもう自由登校になってるのか。」
学年の終わりは、もうすぐそこまで迫っていた。
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