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第2話

1月最後の水曜日。 いつも通り二人で弁当をつついていると、珍しく瀧藤がやってきた。 「橘が今日から三日間は補修しないって。」 「え?鬼の橘が休みくれたんですか!?」 「いや、週明けにテストするから自習しろって言われた。」 学年末テストは二月の半ば辺りにある為、それに向けてのプレテストを実施してくれるんだそうだ。 「ふ~ん。橘ってテストまで作ってくれるんですね。」 「数学以外だけどなー。」 「え!数学教師なのに!?」 「数学教師だからだよ。流石に自分の出題する教科は職務上無理なんだろ。」 出題者がヒントを教えるわけにはいかないし、瀧藤だけがヒントを貰うのは公平性に欠ける。 「「なるほど。」」 「というか、他の教科だってギリギリだと思うけど。」 「あ。そういや皆に言うなよって言われたわ。」 そういう意味だったのか、なんて頷いている瀧藤。 ……こんなお馬鹿さんでも何とかしようと頑張っている橘が報われるように祈るばかりだ。 ――――――― ―――― ― 木曜日。 四限目を終えた途端、振り返った瀧藤が身を乗り出して叫んだ。 「漣!今日弁当持ってくんの忘れたから、おかず分けて!」 「別にいいけど。お前パン持ってんじゃん。」 「足りないんだよ、これだけじゃ~~~。」 両手を顔の前で合わせて、漣様ぁ~と拝んでくる。 中くらいのコンビニ袋には三つ四つパンが見えるけど、それで足りないってどんだけ。 「まあ、いいけど。」 「あざーっす!!!」 運動部の後輩の如く綺麗にお辞儀する瀧藤に苦笑しつつ、鞄から弁当箱を二つ取り出した。 「ちょっと待った!!」 急に大声を出されて驚く。 瀧藤は俺の腕をがっちり掴むと、もう一方の手で指をさし言った。 「それ、なに!」 「え?弁当だけど。」 「いやいやいやいや、そういう事じゃないだろ。」 何にそんなに慌てているのかが分からなくて首を傾ける。 そうしたら更に騒ぎ出したのでどうしようかと思っていると、クラスメイトの一人が近づいてきた。 「瀧藤。3学期入ってから週に一回こんな感じだぞ。」 「は!?言えよ、お前!!」 「お前が補修ばっかで捕まんないから悪いんだろ!?」 なんか、喧嘩始まったんだけど…。 しかも段々他の奴らも集まりだしてきて、収まりそうにもない。 「時間もったいないから俺、先行くよ。」 そう声をかけて教室を出た俺は知らなかった。 「お前らがちゃんと見てるっていうから、俺は昼休憩も補習受けてたんだぞ!」 「俺らが思ってるよりも、安達の戦い方が上手いんだよ!」 クラス総出で俺が安達に落ちないように策を巡らしていたことを。

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