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第5話

「っはぁ~~~~。」 両親に勧められて、今日は久しぶりに湯船に浸かることにした。 俺の体積の分だけ流れていくお湯。丁度いい湯加減で、体から無駄な力が抜けていく。 もやもやは晴れてはいない。 正体も分かってないし、対処法も分からない。 けどなんか、今はそれでいいかって思う。 というか、そう思えるようになったっていうか………。 「………年の功って侮れないな。」 きっと二人には今の俺の状況が分かっているんだ。 両親はこの感覚も、正体も、対処法も知っているんだろうな。 いつか、大人になったら俺もこの気持ちに名前を付けられるだろうか。 ちょっとさっぱりとした気分で風呂を上がると二人が俺の顔色を見て笑い合っている。 俺はむず痒い気持ちになって、足早に部屋に入った。 絡み合っていた思考が解け落ち着いて考えられるようになってくると、今まで見えていなかった疑問が出てきた。 瀧藤が明らかにおかしい。 安達が俺に弁当をねだったことに怒ってたようだけど、契約を破ったわけでは無いし、俺が作ってるならまだしも弁当を作ってるのは母親だ。 滅多に人に手をあげないアイツが、そんな些細な事で安達を叩くはずが無い。 それに瀧藤のあんなに真剣な顔見をたのは、安達と出会った当初、アイツはやめておけと、警告された時くらい。 校内でもちょっと噂になる程性に奔放で、三年や教師達とも関わり合っていると。 「そういえば、“来栖先輩達”って言ってたよな……。」 瀧藤が先輩とつけるということは、来栖とやらは三年生のはず。達ってつくなら、つるんでるグループを指してるんだろう。 そして安達が俺に聞かれたくないことってことは、話を聞かれたら嫌われると思ってるとしたら。 「安達が体を売ってる相手、しかも複数人ってことか?」 もしかしたら、俺が気付いてなかっただけでこの問題は結構厄介なものかもしれない。 穏やかになった心は再び靄がかかり、俺は眠れない夜を過ごした。 ―――――――― ―――― ― 金曜日。 言い表せない不安を振り切って玄関を出た。 今朝は毎回嬉しそうに抱き着いてくる安達には会わなかったし、いつも朝から安達と言い合ってる瀧藤は、遅刻ギリギリに教室に入ってきた。 俺を見つけると、あの真剣な顔つきで「今日の昼、話がある。」とだけ言った。 安達も、瀧藤も、俺も、いつもと違う事ばかり。 なのに、チャイムは笑えるくらいに正確に鳴る。教壇に立つ担任も、号令をかける日直も、何もかもいつも通り。 いつも通り響き渡るチャイムは、今日の俺には断頭台へ向かうカウントダウンにしか聞こえなかった。

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