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第2話
「あーーー、安達、何かあった?」
「えっ!なな何がですかっ!?」
「…………いや何もないならいいんだけど。」
おかしい。やっぱりおかしい。
昼休み、いつものように三人で集まっているのだが、どうも最近の安達の様子がおかしいんだ。
まず、先輩先輩って煩かった安達が、目も合わせない。
偶に視線を感じても、そっちを見たら安達はバッと視線を外す。そして俺が安達から顔を背けたら痛いくらいに視線が刺さってくる。
それに、どうでもいい内容だろうと兎に角俺に話しかけてきたのに、安達から話かけられなくなった。
さっきみたいに俺から話しかけても、目は泳ぐし吃 ってるし、凄く怪しい。
でも一番おかしいのは、安達が定位置に座っていないことだ。
いつもならおれの胡坐の中にすっぽり収まっている安達。それなのに最近は微妙な距離を開けて俺の隣に座っている。
いや、これが普通なんだけど。なんかちょっとだけ、胸の辺りがむずむずする………。
気が付かない間に俺が何か気に障ることでもしたんだろうか。
「昨日のアレ見ました?」
「見た見たあの人の冠番組ってやっぱ面白いよなー。」
…………瀧藤には自分から話しかけられる癖に、俺には話しかけられないんですかそうですか。
楽しそうに昨日のテレビについて喋っている二人に挟まれ、悶々とした気持ちでから揚げをかじる。
ケラケラ笑っている安達を見ていると、悩んでいる自分が馬鹿らしくなってきた。
俺は咳き込まないように注意しながら、なるべく早くホウレン草のお浸しを飲み込む。
突然行動のスピードが上がった俺に驚いている両脇を余所に、手早く弁当箱を片づける。
「せ、先輩どうしました!?」
「ちょっともやもやするから、解消しようと思って。」
うん、別に安達に合わせなくってもいいよな。
「な、なななな何!何ですか!!?」
「どっこいしょ。」
俺はガシリと安達の腕を取って気遣いながらも力任せに引っ張る。
目を白黒させた安達が逃げていかないようにしっかりと抱きしめて、首筋に顔を埋める。
大きく深呼吸すると、良い匂いが鼻を通って肺へ回り、胸のもやもやが口から吐き出される。
「―――――!!」
「んん~、寝そう。寝るね。おやすみ。」
急に温かくなった安達の体温に誘われて、俺は夢の世界へ旅立った。
暫くしてチャイムの音に目が覚める。
抱きしめていた腕を解いてぐっと伸びをした瞬間。
「しししし失礼しますっ―――!!!」
立ち上がった安達が綺麗な九十度のお辞儀を披露して、脱兎の如く教室を飛び出していった。
俺は起き抜けのぼうっとした思考のまま、安達が開け放った扉の向こうを見つめる。
「………………なんでだ。」
やっぱり、やっぱり安達がおかしい!!!
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