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第3話
一体、安達はどうしたんだろう。
授業そっちのけで考えていたけど、さっぱり見当もつかない。
放課後は教室に居座ることなんて殆ど無いのだが、今日は直ぐに席を立つ気になれず、ぐだーっと机に上半身を預ける。
テストは午前だけで終わる為、先週安達に会ったのは登下校中くらいだった。
その間は特に変わったことなんてなかったから、今週に入ってからのことを思い返してみるけれど…………。
別に何もなかったけどなぁー。
「あ゛ーーーーーーー。」
安達に何があったんだ!!?
解けない難問に頭を掻き毟って項垂れると、期限が近い課題と睨み合っていた瀧藤が前の席から声をかけてきた。
「今日はずっと上の空だったけど、どうかした?」
「んーー、何か最近の安達って変じゃない?」
「まぁ、確かにちょっと変だよな。」
同意を示す瀧藤に安心して、俺が感じている安達の違和感を話していく。
目を合わせてくれないこと。
話しかけてくれないこと。
座ってる場所が違うこと。
「お前先に帰ってたから知らないと思うけど、今日の昼なんて目が覚めた瞬間謝られてダッシュで逃げられたんだよ。」
流石にあれはショックだった。
このあいだ折角安達の昔の話とか本音とか聞けたのに…。
なんて頭に浮かぶまま言葉を垂れ流していると、少し複雑そうな顔をした瀧藤に、あのさ、と話を止められた。
「漣、安達のこと、結構好きになってるよな。」
「…………………………え。」
俺が、安達を好き?
背後から急所を一突きされたような衝撃が走る。
「あーーあれ?後輩としてってこと?」
それなら可愛がっている後輩なんだから好きなのは当然だ。
でも瀧藤は首を振る。
「じゃあ人として?」
尊敬できるところも沢山ある安達の人間性は勿論好きだ。
それでも瀧藤は首を振る。
「俺が言ってるのは恋愛感情のこと。」
そう言った瀧藤は、椅子ごとこちらに向き直った。
「お前、自分がどれだけ分かりやすい性格してるか知らないだろ。駄々洩れだから。」
「……駄々洩れ。」
「そう。目線とか表情とか動きとかに全部出てる。お前は気づいてないかもしれないけど、多分安達は気づいてるぞ。」
ついさっきまであんなに饒舌だった俺の口からは何も出てこない。
ただ聞こえてきた瀧藤の言葉が頭の中をぐるぐる回っているだけ。
「お前が安達を好きなら俺が止める権利なんて無い。寧ろ、他人 より心の成長がぐんと遅かったお前に、好きな人が出来て嬉しいと思ってるよ。」
それだけ言うと瀧藤は荷物を纏めて帰ってしまった。
教室に一人きりの、俺を残して。
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