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第3話

ぽかぽかの陽だまりの中、何をするでもなくのんびりと過ごしていると、もう外は暗くなり始めた。 時刻は18時を過ぎ母さんが夕飯を作り始めると、何故か安達がそわそわと忙しなく動き出した。 「どうした?」 「えぇーっと、何か手伝ったほうがいいかなーって…。」 成る程、そういうことか。 ただ、夕飯時の調理場というのは戦場に等しい。 時間をかけないこと。 洗い物を減らすこと。 メニューが被らないこと。 様々なことを求められる主婦の料理は、時に三ツ星レストランを超える難しさがあり、生半可な覚悟で手を出すと、罵られて終わる……と俺は思っている。 「安達って料理できるっけ。」 「………あんまり。」 「あーーうん。じゃあ多分やめといた方が良いわ。」 特にうちの母親は家事の邪魔をされるのは嫌うし、主婦として家事をこなすことに誇りを持っている。 だから、出てきた料理を美味しいって腹一杯に食べてあげるのが一番だ。 「………分かりました!!!」 元気よく返事した安達が少し残念そうに見えて、気づくと口走ってた。 「料理、教えてあげようか。」 「!!」 「お手伝い、してみたいんだろ?」 叱られて、頼まれて、お駄賃目当てで、いろんな理由はあるだろうが、母親のお手伝いというのは多くの人が経験してきたことだろう。 なんとなく、それをしてみたかったんじゃないかと思ったのだが、どうやら当たりらしい。 安達は目を輝かせながら、けれど少し恥ずかしそうに俺の服を握った。 「したい…!」 小さい頭を撫で料理教室の約束をすると、安達はスマホで色々調べながらアレを作りたい、コレを作りたいと言っている。 別に俺もたまにするぐらいで、なんでもかんでも作れるわけではない。 あまりに難しいものを選ばないように口を挟んでいると、父さんが帰ってきた。 「ただいま。」 「おかえりー。」 「あ、あの、お久しぶりです!」 「あぁ、安達君。好きに寛いでいいからな。」 そう言って自室に荷物を置きにいった父を見送ると、母から配膳の手伝いを頼まれた。 元気よく返事した安達がキッチンへ駆けていく姿が、幼い子どもが張り切って母親の手伝いをする様に見えて、思わず笑ってしまう。 真剣な顔つきで皿を運んでくる安達をこっそり一枚撮影して、慎重に運びすぎて時間がかかりそうな配膳を手伝いにいった。 四人で食卓を囲み、手を合わせる。 「どう累君、おいしい?」 「すごく美味しいです!」 「やーもう可愛いわ!!!温人もちょっとは見習ったら?」 「はいはい、うまいうまい。」 いつもより騒がしい食事の時間は、ゆったりと過ぎていった。

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