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第5話
ゆっくりと意識が浮上してくる。
目を開けると視界いっぱいに穏やかに眠る安達が見えた。
まだ少しぼんやりとしたまま、晒されたおでこにキスを落とす。
昨日、寝落ちたよな、おれ……。
いちゃついてる最中に寝たことを嘆けばいいのか、実家で襲わなかった理性を誉めればいいのか。
どっちにしろ男としての矜持が微妙に傷ついたのは確かだ。
なんてことを考えながら、珍しく安達より先に起きれたため、あどけない寝顔を堪能する。
薄ピンク色の唇は薄く閉じられ、小ぶりな鼻からは心地よい寝息が聞こえる。
長いまつ毛や形のよい眉をつぶさに観察していると、ふるり、瞼が震えた。
「………ん、ん~、ん?……せんぱぃ?」
「おはよう。」
無意識に砂糖が混じる声が我ながら恥ずかしいけれど、眠たげな目に囚われてしまえば仕方のないことなのかもしれない。
ぱちぱちと何度か瞬いて、幾分か脳がハッキリしたのかおはようございますと返してくれた。
それだけのことで胸がじんわり暖かくなる。
しばらくこのまま二人で微睡んでいようかと考えた時。
「温人ー!累くーん!朝ごはんできたわよーーーー!!!」
「…………ちっ。」
「ふふふっ、はーーい!」
階下から早く降りて来いと叫ばれてしまい、掛け布団を思いっきり蹴飛ばす。
あからさまに残念がる俺を笑う安達。
お前も同じ考えだったくせにと恨めし気に睨むと、ちゅっと音を立てて唇を奪われた。
……………………はぁ。
「お前ホント。そういうところスゲーわ。」
「これでも、相当場数踏んでますからね!」
ニヤリと笑う安達としてやられた俺とでは、どう考えても経験の差が凄まじい。
敵うわけないかとベッドを降り、寝巻を脱ぎ捨てる。
瞬間、安達の頬が染まった。
「どうした?」
「っ!!!」
ぱくぱくと口を動かすものの一向に声が出ない安達。
熱でもあるのかと心配して距離を詰めたら、顔面に枕が投げつけられた。
「って!」
「もう!目に毒だから早く着替えて下さい!!!」
思いっきり顔を逸らして大声を上げる安達は、どうやら俺の裸に照れているらしい。
恥ずかしさが突き抜けたのかぷんすか怒り出したので、言われた通り手早くTシャツを着ると、安達もその場で着替えだした。
………俺が脱ぐのは駄目で、お前が脱ぐのは平気なんだな。
「先輩のお家ってパン食ですか?ご飯ですか?」
「ん?あー、母さんの気分で変わる。」
既に思考が朝食の内容に向いてしまった安達に急かされ、俺達はリビングへと向かった。
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