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第6話
朝食の後、これから何をして過ごすか安達と話していた時。
「お買い物、行くわよ!!!」
終わった。
女とショッピングなんて、振り回されて疲れ果てること必須じゃないか!
高らかに宣言した母さんはすでに準備万端。
どんなに面倒な未来しか見えなくても、この場の最高権力者の決定には逆らえない。
安達が楽しそうなのが唯一の救いだ。
表情筋が死んだ俺と父さんは今日一日荷物持ちに徹することを決め、近所で一番大きいショッピングモールへ出かけた。
俺達が恋人関係になったことは両親にも筒抜けで、特に母さんは早くも安達をもう一人の息子と思っているらしい。
「累君がいつでも泊まりに来れるように、必要なものを全部揃えるのよ!!!」
そう意気込んだ母さんは目当ての服屋に入ると、試着室に安達を押し込めた。
こうなってしまえばもうお終い。
次から次へと服を渡された安達は、母さんの気が済むまで着せ替え人形として遊ばれてしまう。
「あら~!可愛い、かっこいい!!累君ほらこれ、次はこれ着て、はい!!!!」
「…………はぁーい。」
始めのころはにこにこ笑って対応していた安達も、二十分を超えたあたりから明らかに疲れが滲んでいる。
カーテンが開くたびに、じっとりとした視線が突き刺さってくる。
けれど、俺も父さんもこうなった母さんは止められない、というかこっちに矛先が向かない様にするので精一杯だ。
悩みに悩んで選び抜いた上下三セット分をレジへ持っていく母さんを、安達が慌てて追いかける。
「妙子さん、一着で十分です!お金もあまりありませんし……。」
「なに言ってるの?これは全部私のわがままなんだから、私が払うのよ。遠慮しないで!」
「えっ!?いや、だったらなおさらそんなに買わなくても、」
「安達君。ここは甘えておいて。」
父さんにまで退路を塞がれておろおろと困り果てている安達の頭を、優しく撫でてやる。
「母さんなりに息子を可愛がってるだけだから、許してやって?」
二人には安達の生い立ちや過去のことは話していないけれど、変に察しのいい人達だから何かしら気が付いているのかもしれない。
だからこうして、ありふれた家族の休日を過ごしているのかもしれない。
親として、大人として、子どもには愛を注ぎたい。
なんて、俺の考えすぎかもしれないけど。
「さて!次は食器を買いに行くわよ!!思い切って私達の分も新調して、四人セットにしていいわね~。」
「いいんじゃないか。」
先を行く二人の背中をじっと見つめる安達。
そっとその手を取り、俺達は大きな大人を追いかけた。
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