雑貨好きな母さんと、意外とこだわりが強い父さんが、ああでもないこうでもないと食器を選んでいる。 特にほしいものがない俺達は早々に離脱して適当にモール内をうろついていた。 「よく家族で来るんですか？」 「いや、すっごい久しぶりに来た。俺は基本的に外出しない様に気を付けてたし。」 休みの前日にタイミングよく眠れたならまだしも、二徹、三徹してる時に買い物を楽しめるわけがない。 十歳になる頃には眠れなくて困ってたから、休日に家族で出かけるなんて本当に久しぶりだ。 「なんか見たいものある？俺も全然覚えてないし、看板見に行くか。」 「あっ、あの。先輩、あれって…。」 「ん？……あーーー。」 エスカレーター付近にある案内板を目指し歩き始めたその時、くいっと袖を引かれた。 安達の視線の先には、五歳ぐらいの男の子がキョロキョロと辺りを見渡しながら一人で歩いている。 迷子だ。明らかに迷子だ。 男の子が泣いていないからか、見て見ぬふりをしているのか、周りの奴らは素通りしていく。 「迷子、ですよね。」 「んーー、とりあえず追いかけていい？」 ほったらかしには出来ないが、このご時世、何がきっかけで変態扱いされるか分かったもんじゃない。 だから直ぐには声をかけないで、何かあったら助けられるように一定の距離を開けて迷子を追いかける。 小さい体を目一杯使って、とてとてと歩く子ども。 段々とそのスピードが落ちてきて、小さく母親を呼ぶ声に涙が滲み始め……。 「ぅわぁぁぁぁぁぁ！！」 「あーダメだったか。」 「ままぁぁぁあああああ！！！」 やっぱりすぐに声かけた方が良かったか…。 今までこらえていた寂しさを爆発させるように、泣きじゃくってしまった。 慌てて駆け寄って迷子のそばにしゃがみ、怖がらせない様に、落ち着かせるように、話しかける。 「ママぁ～！！ママぁぁ！！！」 「ほら、どうした。大丈夫か。泣き止め泣き止め。」 「ままっ、ママどこぉぉ～～！！」 「そりゃ泣くよな。っし、こっちこい。」 わしわしと髪をかき混ぜた後、脇に手を差し込みぐっと持ち上げる。 「うわぁっ！！！」 急に抱き上げられて驚いた子供がもぞもぞと暴れる。それをしっかりと抱き込むと人肌に安心したのか、少し泣き声が小さくなった。 ひっひっとしゃくりあげている息を整えるように、ぽんぽん背中を叩いてやる。 「ほら、一緒にママ探しに行くぞ。」 「……ぇ？」 「会いたいんだろ？……安達、ティッシュ持ってる？」 「え、ええっと、はい！どうぞ。」 涙や鼻水でぐしょぐしょの顔を拭ってやると、ぎゅっと短い子どもの腕が首に巻き付いた。