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第2話

押し倒された、と思った瞬間唇に感触。すぐさま舌が割り込んでくる。抵抗しようにも丸四日寝ていない状態なのだ。暴れるのも、引き剥がすのも満足に力が入らず諦めた。 抗う気を失くしたことを察したのか、咥内の動きは荒々しいものから、ねっとりと官能を高めるためのものへと変化した。 「んぅ、はっ、ンンン。せ、んぱ、きもちー?」 トロンと溶けた瞳は目尻が赤く染まっている。ぼうっとする意識の中、上気した頬をそっとなぞった。 「ふふっ、硬くなってるよ、ココ。」 目の前のコイツは小憎たらしく微笑み、俺の股間へ手を這わす。急所に触れられたからか、少し意識がはっきりしてきた。 「俺、お前に喰われるの?」 「僕が、先輩に、食べてもらうの!」 「ふーん。」 頬に空気を含み、怒ってます!とアピールするコイツ。目鼻立ちは整っていて可愛らしい顔をしているが、どこからどう見ても男だ。 「お前、男なんじゃないの?」 「男が男に抱いてもらっちゃ駄目なの?」 「………まあ、別に悪くはないか。それで、ん。」 「ちゅっ。もう黙って。」 再び始まった濃厚なキス。別に嫌悪感はなく、されるがままになる。 ベルトを外す音が聞こえても、グチュグチュと粘性のある音が聞こえても、温かいなにかに包まれても、されるがまま。 「くっ、!!………っはぁ。」 「んやぁっ、あああっ!!!!」 久しぶりの感覚。我慢することなく吐き出せば、倦怠感と共に途轍もない眠気が襲ってくる。 「ゆっくり寝てくださいね、漣センパイ。」 いつもなら苦しいはずの眠りが、なぜだかとても安らかに思えた。 ーーーーーーー ーーーー ー キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン…………。 「………………っ!!チャイムの音?」 目を開く。俺は眠っていたのか。太陽の位置が低い。そろそろ下校の時間なのだろう。 ふと、腕に何かを抱いている気がして目を向けると、見知らぬ男子が眠っている。そいつが俺の制服を握っているため、動こうにも動けない。 こいつ、誰なんだ? この状況になった経緯を思い出そうとするが、四徹目の日なんて殆ど記憶は無い。 どうにかして屋上まで来たことは覚えているが、その後何かあったんだろうか。 とりあえず、鍵が締められる前に学校を出なくてはと思い、男を揺さぶる。 「おい、起きろ。」 「ん、んんぅ〜。……あれ、せんぱぃ?」 「お前が誰なのかは分かんないけど、多分下校時刻だぞ。」 「うぇっ!!!!学校終わった!!?」 わ、びっくりした。 突然起き上がった男が、早く行きましょうと手を差し伸べてくる。特に考えることもなくその手を取り、屋上から出る。 ん?なんでこいつ、顔赤いの?? 「俺、荷物取って来るから、じゃあね。」 教室に鞄があることを思いだし、手を離す。男は何か言いたげな顔をしてるが、下校終了時刻に教師に会うと面倒だ。 気付かないふりをして教室へ向かった。

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