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第3話
朝、東にある窓を眺める。空が薄く輝いたかと思えば、太陽が顔を出す。
「………………眩しいなぁ。」
今日もまた、眠らないままに夜が明けた。
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人間とは案外強くできているもので、4日間程度なら一睡もしなくても生きていける。当然、その間に色々障害はあるが、ドイツの実験では114時間、日数にして5日弱眠らずとも生きて行けたらしい。
不眠症の俺にも一応決まった周期がある。約一週間を眠れず過ごす中で、4,5日目くらいから徐々に意識が混濁していく。そうして数十分、数時間と意識を失っている時間が増え、最終的に一日程度眠る。
俺の場合は自ら眠るのではなく、体が強制的に休息をとるため、ギリギリまで長時間眠ることができないからだ。
眠れなくなってからその周期は崩れることなく今まで生きてきた。それなのに、昨日何であんなに眠れたんだろう。
「……あと、あいつは何だったんだろう。」
昨日眠ったからなのか、珍しく食欲がある。のろのろとベットから出てキッチンへ向かう。
まだ5時半を過ぎたところ。体のダルさも殆どないし、家族の分も作ろうか。
「つか、今日朝焼けじゃん。」
早起きは三文の徳、っていうか寝てないだけだけど良いもの見れた。気分良く朝食を作る。
時間もたっぷりあることだし土鍋で米炊こう。出汁とるところから味噌汁つくろう。冷蔵庫にはーーーよし。焼き鮭、卵焼き、きゅうりと蛸の酢の物でいいか。
「おし、久々に頑張る。」
手順を思い出しながら作っていると、母が起きてきた。
「おはよう。」
「っ!!もう!驚かさないでよ!!!」
「え、挨拶しただけじゃん…。」
「存在感が薄いのよ、アンタは!!!」
存在感………、俺結構身長高いんだけどな…。
「温人 、朝ごはん作ってくれてるの?」
「うん。昨日学校でよく眠れてさ、今日は腹減ってんの。」
「ふ~ん、珍しいわね。」
ありがとう、と言った母は急須にお茶を準備している。俺も欲しいので、湯呑を二つ渡し、再び調理に。
「そういえばさ、起きたら腕の中に人がいたことってある?」
「はぁ?」
ふと思い出した疑問をぶつけてみれば、不可解な顔をされた。まあ、当然の反応か。
「何?温人って意外とやり手だったの?」
「え?」
「男が目覚めた時に抱きしめてる女ってことでしょ?やだー、いつの間にあんたも男になってんのね。」
何か途轍もない勘違いが生まれてる気が…。でも、なるほど確かに、そういう行為をした後っていうのが一番可能性があるのか。
ん?でもアイツ男じゃなかったか?
「まあ、いっか。」
三度料理に集中した俺は、そんな事頭の片隅にも残っていなかった。
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