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第4話
あれから母にやいやい言われ、起きてきた父に報告され、今夜は赤飯だと大騒ぎ。自分の両親ながらどういう思考回路なんだ。
絡まれるのが面倒でいつもより早めに家を出る。元々、余裕をもって出発しているんだ、今日はゆっくり歩いて行こう。
とはいえこの道も一年と半分歩いてるんだ、特に目新しいものはない。
「あー、学校面倒くせぇー。」
駅に着き、改札を抜け、ホームへ。顔馴染みの駅員さんに挨拶すると、今日は顔色がいいと笑っている。
「それだけ元気な顔していたら、駅で倒れる心配も無いね!」
「いつもすみません。」
「ははは!僕は別にいいんだよ、君倒れるところ選んでくれてるし。」
「まぁ、一ヶ月に何回も倒れてたらそのくらいはできるようになりますよ。」
タイミングが掴めるようになったら倒れ方とか、場所とか、選ぶだけだからなぁ。本当、慣れってすごいわ。
いつもより人の少ない電車に乗り、学校の最寄り駅に着く。同じ制服を着た奴らがちらほら。その流れに乗って歩いていれば、大声とともに全身に衝撃が。
「いったいよ、馬鹿。」
「おはよー、漣!!」
「はいはい、おはよう。」
中学からの腐れ縁、瀧藤と教室へ。喋り続けてる瀧藤に適当に相槌を打っていると、担任が入って来る。それでもなお口が止まらない瀧藤に担任の拳が振り下ろされる。
いつもの、朝の光景だ。
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「漣ー、一年がお前の事呼んでるぞー。」
「ん、今行く。」
四限目も終え昼休み。自作の弁当をつついていると、入口の方から呼ばれた。
一年に知り合いがいたかどうか覚い出しながら向かうと、どこかで見たことのある可愛らしい男が立っている。
「先輩!!今日はどうしますか!!?」
「え、何が?」
「お昼寝、しますか?」
ん?ちょっと意味が分からない。どうもコイツは俺を知っているらしいが、誰だ、君は。
俺の制服の袖をつまみ、こちらを見上げる瞳はキラキラと輝いている。
ごめん、俺君のこと知らないんだけど。とか言ったら泣きそうな気がする…。
「ごめん、俺君のこと知らないんだけど。」
ま、言うけどね。
こてっと首を傾げた男は、次に目を見開き、酷く傷ついた顔をした。
「先輩、もしかして覚えてない?そっか、眠る前は意識が朦朧としてるから…。」
「えっ?何か言った?」
「いえ!ごめんなさい!!知らない奴にいきなりこんなこと言われたら驚きますよね!僕は、安達累です!!」
「いや、まあ、うん。分かった、安達ね。俺は漣温人。」
うーん、名前覚えるの苦手なんだけど大丈夫かな……。
とりあえず場所を変えようと言われ、俺より随分小さなその背中に着いて行った。
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