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第3話

「ご馳走様。」 「僕の方が好きなの!!ご馳走様でした!!!」 「俺の方が好きだ!!ごちそーさん!!!」 両耳から聞こえるしょうもない言葉を聞き流しながら、完食。両隣も恥ずかしいことを言いながら、完食。間髪入れず不毛な争いを再開した二人。 本当にもう、面倒くさい。 「お前らなぁ、とりあえず口を閉じろ。」 「でも、せんぱ」 「でも、さざな」 「煩い、喋るな。」 「「………。」」 面倒くさいが、解決させないと更に面倒なことになる。仕方ない、一肌脱ぐか。 「とりあえず、お前らが俺のこと好きなのは分かったから。はい、まずは安達の言い分から、どうぞ。」 僕は漣先輩のことが、世界で一番大好きです。世界で一番漣先輩を愛しているのは、僕です。だから僕は、漣先輩が辛いところを見るのは嫌です。先輩が僕を抱きしめるだけで幸せになれるなら、僕はっ、僕はっ!!! 「うん、分かった。分かったから離れろ。」 思いが高ぶったのかなんなのか、ぎゅーぎゅー抱き着いてくる。こいつ一人ならまだしも、隣で睨み殺さんばかりの奴がいる今は、是非とも即刻離れて頂きたい。 「それで、瀧藤の言い分は?」 俺が漣のことを世界で一番愛してる、ココ重要だから!で、お前な!本当に漣のことが好きなら、漣から離れろ。お前についてるファンの多さ、その質の悪さ、自分が一番わかってるだろ!!それなのにお前は!!! 「はい、分かった。分かったから拳を降ろしなさい。」 胸倉を掴み、今にも殴り掛からんとする瀧藤を止める。 「僕にだってそのくらい分かってます。」 「ならなんで!」 「漣先輩は僕が全力で守ります!!」 「お前みたいな細っこい奴に何が出来る!!」 「はい、どーん。」 「「ぅわぁぁ!!」」 「何すんだ漣!!」 「先輩、何するの!!」 いや、公開告白みたいなもんじゃん、コレ。普通に恥ずかしいわ。 どちらの言い分も正しく、俺への愛が十二分に詰まっていた。恥ずかしさに負けて、二人に体当たりすれば、さっきまでのシリアスな空気が空に霧散した。 さてその後、俺と安達の抱き枕契約が早速更新された。 「安達を抱き枕として眠るのは、月曜日から金曜日までの二回。場所は屋上、時間は昼休憩の20分。セックスは無し!!!約束を破ったり、漣が何かしらの被害を受けたら即刻解消。被害を受けているかどうかの判定は俺が下す!!!」 安達は猛反対だったが、何やら瀧藤と秘密の条約が交わされたようだ。写真だとか、中学生だとか………何の取引が行われたのかは、ツッコみたくないので辞めておいた。 こうして俺は、睡眠不足になったのだ。

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