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第6話

抱き枕契約開始から1ヶ月半、契約更新から1ヶ月経った。 今なお安達と瀧藤の攻防戦は続いている。既に、俺が安達を抱き締めて眠っていることは、周知の事実となり………。 「……………ぁーーーー、視線が痛い。」 「ほらな、こうなった。」 「っ、先輩、ごめんなさい。」 「ん、お前だけの責任じゃないから、気にするな。」 日増しに、一部から俺への悪意ある視線が増えていた。 安達のファンは俺が思っていた以上に多かったらしく、学校にいる間は常に誰かから見られている気がする。まぁ、中には野次馬もいるのだろうが。 ここのところ、抱き枕の日以外の昼休みは三人で過ごしている。本日もまた二人の小競り合いを聞きながら、母お手製の弁当を食べている。 「お前もしつこいな!」 「先輩こそ、早く認めて下さい!」 「………結婚申し込んで反対されてる、っていう図?」 二人を止める気などとうに無い。今日も元気だなぁ〜と眺めるだけだ。そんな俺の態度が余計に解決を先延ばしているのは分かっているのだが………。 どうにも昔から周りに関心がなく、生きていれば良い、という考え方な自分。好きな食べ物も、音楽も、教科も、趣味もない。 「漣、お前はどうなんだ!」 「そうですよ、先輩!漣先輩はどっちなんですか!!」 「どっちって言われてもなぁ。」 俺の健康のためには安達の案がいいと思う。でも瀧藤の言うことも最もだ。じゃあ俺が引かれる方を選べばいいんだが。 睡眠不足は何も今に始まったことじゃないし、俺が眠れないだけのこと。安達と関わってるからって文句を言われるのは、ファンから見たら当然のことだろうし。 「んー。…………どっちでもいい。」 「「それはなし!!」」 「えぇー、うーん………。知らん、面倒くさい。」 背中に抗議の声を受けながら、屋上を出る。逃げるが勝ちってやつだ。安達も瀧藤も、昼飯はまだ食べきっていなかった。走らなくても、追いかけては来ないだろう。 「…………………、はぁぁ。」 こうして一人で歩くと、より視線を感じる。俺への悪意が込められたそれは、チクチクと針で肌を刺すよう。俺の意思ではないが、安達を二度も抱いていることがバレたらもっと凄いことになるだろう。 安達と俺とはシていないから、安達の俺への気持ちは兄弟や尊敬する先輩への愛だ。 そう考えて、自分を抑えているファンが大多数を占めている今は、実質的な被害にはあっていない。只々ジロジロと不躾な視線を向けられているだけである。

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